第71話 ある種の感動さえ感じてしまう


 すると、ルドルフは周囲の野次馬たちに『もし証言を言うように命令されても俺の不利になるような事はするなよ』と言わんばかりの眼光で睨みながら見渡すのだが、そんなルドルフを見るクラスメイト達の目は、ルドルフの睨みに怯むどころかまるでバカを見るような冷めた視線を向けているではないか。


 そのような恐喝紛いの事を恐らくルドルフは今まで経験した事など無かったのだろう。


 表面上では必死になって取り繕おうと必死になっているが心の中ではかなり焦っている事が手に取るように窺えてくる。


 それだけ今まで権力で相手を押し潰して来たという事なのだろうし、それをして誰も反抗してこずルドルフの言いなりになって来たのだろう。


 野次馬の中にはルドルフに対して向ける視線に憎悪を宿している連中もちらほらと見えるので過去の自分がしでかした行為が今になってルドルフに襲い掛かってきているのだろう。


 やはり人に恨まれるような事をするといつか自分に跳ね返ってくるものだな……。


「ぐっ……お前ら、あれほど受けた恩を仇で返すというのか……っ。覚えておけよ……っ」

「いや、身から出た錆、自業自得だろう。そもそも野次馬たちを睨みつけているのは、まさか嫌がっている者たちに無理やり嘘の報告をしろという圧をかけていたんじゃぁ無いだろうな? それは違法行為なのだが?」

「そんな事などしっているわっ!! そもそもこの俺様を助ける為ならば法を犯して捕まったとしても役に立ったと喜びはすれど、嫌がる訳がなかろうっ!! そもそもお前が俺の発言を映像と音声で勝手に証拠として残すなどという、同じ公爵家として姑息過ぎて目を疑うような手段を取ったお前が全ての原因であろうっ!!」


 バカだバカだと思ってはいたが、コイツは正に所謂『底抜けのバカ』というヤツなのではなかろうか?


 ここまで頭の悪い奴を俺は見た事が無いのである種の感動さえ感じてしまう程である。


「…………まぁ、お前もその姑息な手段の一つである録音を勝手に行っていたというのはどうなんだ? というのもあるのだが…………流石にお前調子に乗り過ぎていないか? まぁいいや。お前の当初の目的は俺との決闘だったな。別にお前と決闘をしても良いが、もし負けたら土下座に慰謝料として金貨千枚、そして勝ち負けに関係なく当然別途今回クヴィスト家に対して虚偽の内容で貶めようとした行為に関してもしっかりとそれ相応の対応をお前の家にはしてもらうからな?」

「あ? それはこっちのセリフだろうがっ!! お前こそ覚悟しておけよっ!!」

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