第67話 噂は所詮噂でしかない



◆ルドルフside



「パパッ!! この俺をコケにしやがった糞野郎をボコボコにしたいからどうにかしてくれ!!」


 俺は学園から帰るなり苛立ちを隠そうともせず足を踏み鳴らしながら、パパを怒鳴るように名前を呼ぶ。


「おぉ……どうしたのじゃ? ルドルフ。 そんなに粗ぶりおって……。学園から帰って来るなり不機嫌ではないか。何か嫌な事をされたのか? もしそうであったのならばパパに言ってごらん。どんな手を使ってもパパがどうにかしてあげようではないかっ」


 するとパパが満面の笑みで俺の元までやって来ると、俺が怒っている理由を聞いてくる。

 

「どうしたもこうしたも無いんだよっ! パパッ! 学園でルーカスという奴にバカにされたんだよっ!! しかもクラスの女子たちを騙すような形で誑かしやがったんだっ!! 本来であればこの俺の女たちであったにも関わらず、ルーカスのせいで何故か俺が女性陣たちから馬鹿にされて見下される始末。しかも唯一俺の元に来てくれた女生徒達もその女どもがアブスブルゴ家は借金まみれでどうしようもない的な嘘を言ってくれたせいで、全員離れて行ってしまったんだっ!! パパならどうにかしてくれるよねっ!?」

「何っ!? どこのどいつだそのルーカスとか言うバカはっ!? 良いだろう、この儂が最高の魔杖を手に入れて来てやろうっ!! その魔杖で格の違いというヤツを見せつけてやればよいっ! そんなゴミはゴミのように扱っても誰も文句は言わんじゃろうっ!」


 流石俺のパパである。最高級の魔杖さえあればそれだけで俺は学園一の魔術師となれる可能性もあるほど、魔術師にとってそれだけ魔杖というのは重要な武器であり、そんな魔杖をポンと出せるあたり俺の家が貧乏な筈がないだろう。


 やはり、噂は所詮噂でしかないのだ。


 今からクラスの奴らがこの俺にひれ伏す姿を想像して、興奮して来たではないか。


「……ちっ、面倒事を起こしやがって。ただでさえ金が無いというのに、この儂の息子に喧嘩を売りやがって……っ! しかし、どうしたものか。最高級の魔杖を与えてやりたいのは山々なのだが、我が家に借金はあれどそんな物を買う余裕は無いぞ………そうだっ! 流石儂だな。 無いならアブスブルゴ家よりも爵位の低いカスどもから借りて奪ってくればいいではないかっ」

「うん、何かぶつぶつと喋っているけど、何か問題でもあったのか? パパ」

「いや、大丈夫だ」


 なんか汗をだらだら流しながらぶつぶつと何か真剣な表情でパパが呟いていたのでどうしたのか聞いてみると、大丈夫だと良い表情で返してくれるので、大丈夫なのだろう。


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