第65話 井の中の蛙
「あ? この俺に向かって太っただけのゴミ……だと? ふざけんじゃねぇぞっ!!」
ここは冷静に、最悪撤退を視野に入れて戦うべきであったのだろうが、俺は怒りで頭に血が上り、その怒りの感情のまま両手を握って振り上げるとそのままコイツの脳天目掛けて力の限り振り下ろす。
例え相手の罠であったとしても、今まで俺の攻撃を耐えてきた分だけ蓄積されたダメージというのは必ずある筈である。
そうじゃなきゃこいつは人間ではないし、一人で竜種を倒せるような、そんな奴はおとぎ話の英雄ではないか。
おとぎ話の英雄は現実には存在しえない力を持っているからこそ価値があるのだ。
これは、語り継がれた偉人たちにも同じことが言える。
でなければ今活躍している冒険者を主人公にすれば良いだろう。
そうだ。
そんな物語にいるような人間離れした超人などこの世界にいる筈がないのだ。
例え俺の攻撃を数十回と受けきり、その間に俺の拳をズタズタに引き裂く事ができようが、こいつが物語に出てくる英雄でない限り俺と同じ人間なのである。
そして、人間は壊れるものだ。
俺が本気で潰しにかかって壊れない人間などこの世にいる筈がない。
「そんな存在、いてはいけないだろうがよぉっ!!」
「どんな存在か知らないが、お前ごときの攻撃など受けきれるに決まっているだろう? こんなゴミみたいな攻撃しか知らないような底辺が、両の手で振り下ろしたところでゴミみたいな攻撃でしかないのには変わりないだろう。あと、建物が壊れないように事前に結界を張ってやったんだから感謝してほしいね。まぁ、すぐ死ぬから意味ないだろうけどな」
「な、何で…………何でだよぉぉぉぉおおおおっ!! どうしてだよぉぉぉおおおっ!! お前みたいな人間がこの世にいて良いわけが無いだろうがよぉぉおおっ!!」
「いや、自分基準で考えるからお前の世界は小さいんだろう? そう言うのを井の中の蛙大海を知らずって言うらしいぜ? まさに今のお前にぴったりの言葉じゃぁないか。ずっと井戸の中の世界しか知らないお前が、井戸の外の俺にであって世界の広さを知る事ができたんだ。それだけでもありがたいと思わないとなぁ。まぁ、これも何かの縁だ。お前の為に俺が本物の打撃技というものを教えてやるよ」
やばい……やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいっ!! コイツはヤバいっ!!
俺の本能が今すぐ逃げろとけたたましく脳内で警告音を鳴り響かせてくる。
相手が攻撃する意思を見せただけでこれだ。
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