第57話 俺は何も聞かなかった事にしよう
しかしながら訂正するのも面倒くさいし、言い訳しているみたいに見えてしまうのでここはスルーする事にする。
そんなこんなでワイワイとクラスメイト達が騒ぎつつも全員揃ったようで、少しして担任である教師が入ってくる。
その瞬間、クラスメイト達から『げ……っ』という声が聞こえて来るではないか。
一体どんな教師が担任ならばそんな声が出るんだ? と思い教壇へと視線を向けると、そこには先ほど俺を助けてくれた野生のゴリラがいるではないか。
あ、いや……そう言えばこのゴリラは元々この学園の教師であったな……。
あまりにもゴリラ過ぎて普通にいつの間にか勘違いしてしまっていたようである。
「ようこそみなさん。私はこのクラスの担任をさせていただきますゴーリ・ラーデスです。みなさんよろしくお願いします」
…………うん、俺は何も聞かなかった事にしよう。
そもそもなんだよ、ゴーリ・ラーデスって名前……。笑かしにきているとしか思えないんだが……。
そんな疑問を抱きつつも担任教師であるゴーリ先生は淡々とこの学園のルールや授業内容、食堂の使い方などを説明していく。
うん、制服が違う時点で察っしていたけど食堂では俺たちにこのクラスの人間しか食べられないスペースがあるようだ。
正直言ってそんな場所で食べたくない。けれどもこの制服を着て一般のスペースで食べるのも嫌だ。
まさに八方ふさがりである。
そんな事を考えていると鐘の音が鳴り、一旦休憩を取るようである。
そしてクラスメイト達は、男性はフィリアの元へ、女性は俺の元へと集まってくるではないか。
しかしながらフィリアと違い俺の両隣りは奴隷兼側仕えであるサシャとリリアナが座っているのでまだマシだろう。
「ちょっと、側仕えのメイドの癖に私たち貴族の邪魔をしないでくださるかしらっ!? そんな単純な事…………あら、あなたどこかで見たような、しかしあそこの娘は数年前に死んでいたはず……きっと他人の空似ですわね」
「あぁ、そうだな。他人の空似だな。あと、俺が隣に座るようにと命令しているんだ。彼女たちに対して文句があるようならば俺に言っているものと判断するが、それで良いか?」
すると、気の強そうな女性が俺の奴隷に突っかかろうとした時、リリアナを見て首をかしげ、不思議そうにしていたので話を逸らす事にする。
「あ、いえ……そんなはずではございませんので……っ。私も出過ぎた事を言って申し訳ございませんっ」
「うん、俺はそうやって自らの過ちを認めて頭を下げられる人間は好きだな。次からは気を付けてくれ」
「は、はいっ!!」
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