第53話 流石に殺さないよな?



◆ルーカスside



「それでは行ってきます」

「「「行ってらっしゃいませ」」」


 俺はメイドたちに見送られながら学園へと向かう馬車へサシャとリリアナと一緒に乗り込む。


「なんだか、奴隷の私も一緒に行っても良いのかと緊張してきたわ……」

「サシャはまだマシですわよ……。わたくしなんて、学園には一つ上のお兄様がいるんですもの……っ。学年が違うので合う事は無いかもしれないのですけれども、万が一という事もございますので、そんな地雷が無いだけ全然ましですわ……っ」

「それを言われると、言い返せないわね……っ」


 そしてサシャとリリアナは奴隷という立場だからこそ貴族が集まる学園に行くのは緊張するらしい。


 リリアナに関しては別の意味でも緊張しているようである。


「ご主人様は緊張しないのかしら」

「いや、普通に緊張はするが……でも万が一絡まれてもぶっ飛ばせる自信はあるし、ぶっ飛ばす前に公爵家をちらつかせれば面倒事はそう起きないだろうと思っているので、新しい環境で過ごす緊張はあるが、それ以外に関しては何ら緊張は感じていないな」

「あぁなるほど……私もご主人様以外ならば負ける想像がつきませんし、そもそも公爵家であるご主人様の奴隷という時点で誰も私に手を出せないわね。それを聞いて少しだけ安心したわ」

「そうですわよね……。わたくしもあの頃のわたくしとは違いますもの。ルーカス様から貸し与えてくださった【拳銃式自動魔力転送媒体器】が無くともお兄様位であれば余裕で勝てるに決まっていますわっ!! なんてたってわたくしは試験官を倒してAランク昇級試験に合格した、A級冒険者ですものっ!! むしろちょっかいをかけられたら正当防衛としてボコボコにしてざまーみろと言ってやりますわっ!! それが目的でわたくしはルーカス様の奴隷になったんですものっ!! やってやりますわっ!!」


 サシャから『緊張しないのか?』と聞かれたので素直に答えると、サシャもリリアナも必要以上に緊張する事も無くなったようで良かったと思う反面、リリアナに関しては自分から血の繋がった兄をボコりに行きかねないので、別の心配ができてしまった。


 とはいえリリアナも馬鹿ではないので自分が有利な状況、ボコる正当性をしっかりと得てからボコるだろうからこの場合リリアナではなくリリアナの兄が心配だったりする。


 …………流石に殺さないよな?


 そんなこんなで奴隷たちと雑談をしていると、馬車が止まり、学園に着いたようで御者をしてくれていた男性の使用人が扉を開けてくれる。

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