第54話 居心地の悪さは最悪


「見てっ! あれって……っ!」

「間違いないですわっ! ルーカス様よっ!! 今年入学する中で一番爵位の高い……っ」

「今まで貴族のパーティーなどには一切出ない為、もしかしたら容姿が見るに堪えない程アレな感じでコンプレックスを抱いているのでは? と噂ではありましたが……っ」

「噂は所詮噂ってことが分かりましたね……っ! 物凄いイケメンではございませんかっ!!」


 そして俺が馬車から一歩外にでると、まるで獲物を狙う猛獣のような視線を向けて来る女性たちの会話が聞こえて来る。それと共に『こんな奴のどこが良いんだよ? 所詮爵位だけでその他がゴミ過ぎるからパーティーには参加できなかったんだろう?』というような会話も聞こえて来て、とりあえず居心地の悪さは最悪である。


「あ、あの……ルーカス様ですよねっ!?」

「そうだが──」

「きゃぁっ!! 聞いたかしらっ!? 私たちの推理通りルーカス様でしたわっ!!」

「えぇっ!! 聞きましたっ!! そして、そのお声もまた、良いお声でしたわ……っ! それこそそこら辺の有象無象達とは比べ物にならないくらいに……っ」


 そんな周囲を見てこれからの学園生活に不安を感じていると、俺の事を遠巻きで噂していた女性陣の中から二人の女性とがもじもじしつつ俺の方へとやってくると、俺が本当にあのルーカスであっているのか確認してくるではないか。


 とりあえず無視するのもどうかと思った俺は肯定すると、そのあとの俺の言葉を遮り少女たちは二人できゃいきゃいとはしゃぎ始めるではないか。


 すると周囲にいる女生徒たちの目は獲物を狩る肉食獣から腹を空かせた・・・・・・肉食獣の目へとランクアップしており、いつの間にか俺の周りに女生徒たちによるサークルができ、じりじりと近づいてきているではないか。


 そして、その光景を男子生徒は遠巻きでヘイトを向けて眺めているだけである。


 むしろヘイトを向けるくらいにムカついているのであれば俺に突っかかって来て欲しいと思うのだが、恐らくそうしたいのだが爵位的に歯向かう事ができないと理性でセーブしているのだろう。


 そこは若くとも貴族の息子達といった所だろうが、今日に関しては突っかかって来て欲しい。


「こらっ!! 新入生共っ!! 新しい環境、新しい人間関係で心躍るのも分かるが馬車が通るこんなところで固まるのは邪魔だろうっ!! 自己紹介などは自分の教室に行ってからするようにっ!!」

「……あれが先輩たちが言っていた鬱陶しい教師ですか……確かに鬱陶しいですね」

「私たちとルーカス様の運命的な出会いをあの教師の野太い声で台無しです……っ」


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