第50話 密かに感動していた


 そして、わたくしのこの『魔術陣を書きながら戦う』というあり得ない戦法がレベルの高い魔術師相手でも通用するかどうかが今日分かる。


「これは、藻掻き足掻きながらも光を求めたわたくしの出した答えですわ……っ」


 正直な話しをするとまだ粗削りでしかなく、行使する段位が高くなればその分書かなければいけない必要な部分も増えていく為、その分魔術を行使する魔術の段位がバレてしまいやすいという欠点もあるのだが、それは他の魔術師達が魔杖を使ってスペル詠唱を省いている仕組みを応用してこれから新しいわたくし専用のサブ・・の魔杖を作って行こうと思っている。


 これで初めてわたくしは魔術師として胸を張って言えるような、元家族の呪縛から解き放たれるような、そんな気がするのだ。


 そもそもの話【拳銃式自動魔力転送媒体器】でしか戦えない状態で私の家族たちを見返したところでそれはわたくしが凄いから見返した訳でもなく、ただルーカス様から貸し与えてくださった【拳銃式自動魔力転送媒体器】が凄いだけでしかないのだから、それではわたくしの中のドロッとした感情は無くならないだろう……。


「ほう、君は色々と若いなりに苦労をしてきたのだろうね……。そして魔術陣を使って戦うという戦法は新しく、実に面白いですね」


 そして今わたくしがする事は目の前の魔術師を倒す事なのだが、そこはやはりAランク昇給試験を受け持つ試験官である。


 そう簡単には倒せないどころか冷静にわたくしの戦法を分析しているようだ。


「なるほど、魔術を詠唱ではなく魔術陣にする事で『魔術を設置』する事ができるというのは、かなり使えそうですね……。しかしながら魔術陣が見えているので読まれやすいという改善点はまだあるようですが……」

「そうですわね。ですが『見えている』からこそ牽制でき、相手の動きを制限する事ができますわね。デメリットも使いようですわ」

「それを試験官である私が言われてしまうと立つ瀬がないですね」


 そしてわたくしはこうして試験官と『わたくしだけの力で魔術師として戦えている』という事に、密かに感動していた。


 間違いなくこんな未来が来ると昔のわたくしに言っても信用してくれないだろう。


「ですがリリアナさんの立ち回りは、魔獣討伐は長けているという事は立ち回りから理解する事は出来ますが、それと同時に対人戦の経験はあまりないという事も分かってしまいますね」

「それに関しては否定できませんわね……。ですが、それでもこの試験は試験官さんを倒して合格をしたいと思っておりますの」

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