第49話 普通ではあり得ない方法


◆リリアナside



 ルーカス様がわたくしに教えてくれた事は、大きく分けると二つ。


 一つは、この世界にはまだ知らない魔術が数多くあるという事と、もう一つはわたくしに魔術の才能が無いのではないという二つである。


 特に二つ目に関してはわたくし自身受け入れる事が難しかった、というのもルーカス様曰くわたくしの魔力総量は多いのだがそれを繋ぐパイプが壊れてしまっているとの事を教えてもらったのだけれども、それはとどのつまり結局才能がないのでは? と思ってしまっていた。


 しかし、この場合は『魔力を扱うセンスや技術と体内にある魔力を上手く外に出せないのとはまた別』という事を理解してからはわたくし中の価値観が一気に変化したのが自分でも分かる程には、見えていた景色が変わったのを今でも覚えている。


 そしてまず考えたのが【拳銃式自動魔力転送媒体器】を何故わたくしは限界値である三百挺も複製して使える事ができるのかという事である。


 それは先に言った通りわたくしの魔力量総量が多いからというのも勿論あるが、それを外に出す機能が壊れているのであればそもそも無理なのではないのか? と疑問に思いルーカス様に訪ねてみた所【拳銃式自動魔力転送媒体器】に組み込まれている魔術陣が離れた所でもリンクさせて使えるように『契約している魔術師本人から直接魔力を供給可能にしている』からだという事であった。


 要すると、わたくしは体内の魔力をコップで掬ってその水に着色するという工程に必要なコップが壊れているのだけれども、この【拳銃式自動魔力転送媒体器】はそのコップに入れて着色するまでの工程を省いて自動化しているという事らしい。


 そのギミックを理解したわたくしは【拳銃式自動魔力転送媒体器】が使えない最悪な状況を想定して冒険者ギルドの依頼をこなしつつ実験を繰り返していたのである。


 勿論、ルーカス様に相談するというのが一番早いとは思うのだが、これに関しては『わたくしは魔術の才能が無い』というコンプレックスを払拭する為にもわたくし自ら解決したいという思いが強かった。


「何だ? この見た事も無い魔術陣は? しかも、かなり短縮されており最早記号化している……っ」


 そしてわたくしがたどり着いた一つの答えが、トーチを行使できる位には魔力を扱えるのならばその魔力を使った『魔術陣を書きながら戦う』という普通ではあり得ない方法であった。


 流石に魔術陣を記すスペルや模様等は独学では無理がある為、そこに関してはルーカス様におすすめの参考書を借るというズルはしたものの、そのお陰でごちゃごちゃした魔術陣を書くという、最大のデメリットを省く事に成功して、最低限実践レベルで戦える物にまでなったと思っている。

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