第46話 昇格試験
なんだろう……こんな人達が帝国の冒険者ギルドのトップで大丈夫なのか? と少しばかり不安になってしまう。
そして、秘書であろう女性によって施設の奥へと引きずられるように連れていかれるギルドマスターを眺めながら俺たちは受付へと向かう。
その途中「君達っ!! 助けてくれないかっ!! 才能ある若者達よっ!! もう書類の山は見たくないんだっ!!」という叫び声と「ただの戯言なのでお構いなくーーっ。ほらっ!! 行きますよっ!!」という声が聞こえてきた気がしたのだがきっと気のせいだろう。
「それではリリアナさんの拠点を当ギルドへと移す手続きをいたしますのでギルドカードを提示していただけますか?」
「分かりましたわ」
「あ、今少しだけ大丈夫でしょうか?
そんなギルドマスターの下で働く受付嬢は至って普通なようで、少しだけがっかりしてしまったのだが、これで俺たちの当初の目的である『リリアナの拠点ギルドの変更』は完了したので、立ち去ろうかと思っていたのだが、受付嬢に呼び止められる。
「どこかおかしなところとかございましたの?」
「いえ、そうではございませんが今リリアナさんは冒険者ランクをBランクからAランクへの昇格試験を受ける事ができるみたいです。試験自体は地下に隣接している闘技場で模擬戦を行うだけであり、万が一昇格できなくとも半年空けないとペナルティーなども無いので受けてみませんか?」
当のリリアナは呼び止められるような事に思い当たる節が無かったので確認してみると、どうやらリリアナの冒険者ランクをBからAへの昇格試験を受ける事ができるようで、その確認のようであった。
「…………」
「リリアナはどうしたいんだ? リリアナ自身の事だから俺の一存ではなくリリアナが今どうしたいかで判断するべきだろう。時間の事に関してはこの後別荘に帰るだけだったから気にする必要はないぞ?」
その説明を受けたリリアナは『どうすれば良いのかしら?』というような表情で俺の方を見つめて来るので、リリアナ本人に判断は任せる事にする。
というか俺がどうのこうのと横から指示を出して良い話でもないような気がするので、俺に振られても困るというのが本音ではある。
「分かりましたわ。では、わたくしは本日昇級試験を受けさせていただきますわね」
俺の言葉を聞いたリリアナは目をキラキラさせ、まるで少年のような表情で昇級試験を受けると受付嬢へと告げる。
「かしこまりました。では闘技場へと案内いたしますので私の後ろをついて来てください」
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