第45話 死ぬ訳ではありませんので
そういうと禿げた筋肉だるまは頭をぺちぺちと叩きながら「おれも平穏に余生を過ごしたいと思って帝都に来た一人なんだがな……」とどこか寂しそうな目で遠くの方を見る。
きっと、この禿げた筋肉だるまの人生においてゆっくりと過ごしたいと思ってしまうような事があったのだろう。
人に人生ありとも言うしな──
「あっ!! こんな所にいたんですかっ!? ギルドマスターっ!! 書類仕事をほっぽり出して何にサボっているんですかっ!?」
「ちっ、バレたか……。意外と早かったな……」
「今何か言いましたか? ゴーズ・アーガイギルドマスター……?」
「いや、何も。しかし今私は未来ある新人の世話をしているのだ。 サボりとは酷い言いようではないかねっ!?」
──と思ったのだが、どうやらただサボる口実に俺達に話しかけて来ただけのようである。
まぁギルドマスターまで上り詰めたのであれば、本当に色々とこの人にもあったと思うので思うところはあるものの、むしろ筋肉だるまのサポートをしているだろうこの秘書っぽい女性職員の方が色々と大変そうだなと思ってしまうのは仕方のない事だろう。
飲みに連れて行ったら永遠と筋肉だるまの愚痴を吐き出す姿が容易に想像できてしまうくらいには。
「あ、帝都の冒険者ギルドのギルドマスターという事は、ゴーズ・アーガイさんかしら?」
「お、君は私のファン──」
「違いますわね。ただ、タリム領で冒険者をしていた時にゴーズ・アーガイという凄い冒険者が昔いらして、今は帝都のギルドマスターをしているという話を仲良くしていただいた受付嬢さんから何度か聞いた事があったことを思い出しましたわ……」
「ほう、例えばどんな話かな?」
そんな筋肉だるまの事をリリアナはタリム領で冒険者の依頼をこなしている時に受付嬢から話だけは聞いていたようで、ゴーズさんはタリム領の冒険者ギルドで話されていた自身の噂話が気になるようである。
「タリム領で噂されているギルドマスターの話などどうでも良いでしょうっ!! そんな事よりも今は貯まった書類仕事をどうにかしてくださいっ!! 後は目を通してギルドマスターのサインをするだけにしていますからっ!!」
「し、しかしだな……っ。今聞かなければこの者達は明日にでも帝都を発ってしまい一生聞く事ができなくなるかもしれないだろう……っ?」
「だとしても死ぬ訳ではありませんのでっ」
「痛いっ!! ヒールの踵部分で蹴らないでくれといつも言っているだろうっ!?」
「なら蹴る前に行動に移してくださいと私もいつも言っておりますが……っ?」
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