第44話 禿げた筋肉だるま
「しかし、やはりというかなんというか、タリム領の冒険者ギルドとは違って倍以上は大きいな」
馬車から降りた俺の目の前には七階建てでかつ、横幅も長く大きな建物があった。
この世界で七階建ての時点でかなり珍しく、その大きさに軽く圧倒されそうになる。
「帝国が運営する冒険者ギルドの総本山ですので、それなりの建物だろうとは思っていたのですが、想像以上ですね」
「ですが、外見だけで依頼も殆ど無いですわよ?」
そして三人で冒険者ギルドの中へと入り周囲を見渡していくのだが、確かに掲示板に貼られている依頼だけ見てもタリム領の半分以下である。
「そりゃぁ地方の冒険者たちが頑張っているお陰で帝都周辺は魔獣に襲われるような心配は少なく済んでいるからなぁっ!! それでも魔獣が居ない訳ではないしある意味でここ帝都の冒険者ギルドを拠点にする事が冒険者たちの最終目標の一つでもあるから実力者達が自然と集まってくる場所でもあるぞっ!! ほら、言っているそばから今入って来た奴は冒険者パーティー狼炎のリーダー、ヒューイだぜ?」
そんな俺たちは傍から見たら初めて帝都に来た観光気分の青少年達に見えていたのだろうし、実際ほぼ当たっているのでそれについてはどうこう言うつもりは無いのだが、そんな俺たちを見て一人の禿げた筋肉だるまが話しかけてくるではないか。
その禿げた筋肉だるま曰く、帝都周辺の地方のほうが討伐対象も多く、結果依頼も多いという事らしい。
確かに前世でも地方の方が農業関係の会社が多くなっていたし、狩猟なども都内ではまず行うことは無いので、それを考えると確かにと納得してしまう。
ようは帝都の中心に行くにつれ周辺にいる冒険者たちがある程度間引いてくれていたという事なのだろう。
それでも前世と比べてしまうといくら帝都といえどもまだまだ発展途上と言わざるを得ないのが現状であり、依頼は少ない物のあるにはあるといった所だろう。
しかしながら、ならば逆にそんな依頼の少ない帝都の冒険者ギルドへ憧れるのか良く分からない。
あと、冒険者には興味ないので今紹介された冒険者がどうとか説明されても『ふーん』程度の感想しか無い事は黙って置く。
「そうだな、それは帝都に拠点を移せるくらいにはお金に困らない地位を手に入れる事ができたという一種のステータスになっているからだなっ! まぁ、血の気の多い奴らはそのまま地方に残る奴らも多いから一概に『地方にいる冒険者はレベルが低い』という訳ではなく、むしろ温厚な性格の奴らが帝都に集まって余生を過ごしているといった感じだなっ!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます