第39話 ごめん。うん、普通に無理


「…………いや、流石に種族としても色々と違い過ぎるだろう……っ」

「そんなものでしたら二人の真実の愛の前では無意味に等しいですっ!! むしろ種族が違うからこそこの愛は真実だという証拠でもありましょうっ!!」

「…………えぇ……っ」


 そしてルーカス様は遠回しでグウィバーの求婚を断ろうとするのだが、とうぜんそのような相手に察してもらう必要がある方法で『初めて恋する乙女確変状態』に入っているグウィバーに通用する筈もなく、むしろ『だからこその真実の愛』という風にグウィバーの脳内で変換されてしまっているようである。


 今のグウィバーであればどんな事を言った所で全てを『これも全て真実の愛故です』などと良いそう……というか間違いなく言うだろう。


 あぁ、娘さんの目からハイライトが消えてしまっていますわっ!! た、確かに自分の親が恋で周りが見えなくなる姿を想像すると地獄ですわねっ!!


「いや、というか普通に無理というか、ごめん。うん、普通に無理」


 さすがのルーカス様も傷つかないようにと配慮して断ったところでグウィバーの脳内によって改悪変換される事に気付いたのかストレートに、ド直球で断る事を選んだようである。


 これはグウィバーと言えども可哀そうではあるものの流石に気付くだろう。


「あぁ、そうですね。流石にこの姿のままでは無理ですよね……失礼しました。何のために従魔契約をしたのかという話ですものね。勿論私の傷を治すという事もありますが上位種族の場合は主に心から忠誠を誓っている者は主の種族に近い体形へ変化する事ができるようになりますものねっ!! その為の従魔契約でもあるという事を失念しておりましたっ!!」


 そう言うとグウィバーは人の姿(とはいっても完全に人の姿ではなくどちらかと言えばドラゴノイドのような見た目なのだが)へと変化すると、そのままルーカス様へと抱きつこうとするではないか。


 しかしながらグウィバーの抱き着きはマリエルさんに頭を掴まれて失敗に終わってしまう。


「…………私たちの愛の抱擁を邪魔しないでくださる?」

「羽の生えたトカゲの分際でマイマスターに求婚するなど身の程を弁えなさい」

「あら、私これでも強いんですよ? 試してみます?」

「トカゲごときがイキッたところでたかが知れています。あまりデカい態度をとると恥ずかしい思いをしますよ?」


 そして二人は戦い始めてしまうではないか。


「リリアナ、二人は放っておいて帰ろうか?」

「それもそうですわね。わたくしも巻き込まれてしまう前に帰りたいですもの……」


 その後、この二人の戦いによってギルドには『天災級の魔獣同士が縄張り争いしている可能性あり』という情報が入って来ていた事を知るのはもう少し後になってからであった。


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次回から学園編でございます。


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