第37話 ルーカス様の認識を改める


「では早速従魔契約をしようか。ちなみに君の名前はなんだい?」

「私の名前はグウィバーという名前です」


 そのままスムーズに話は進んで行き、母竜であるグウィバーはルーカス様の従魔となってしまうではないか。


 まさか竜種、それもこれほどの巨躯をもつ個体を従魔にした者は帝国の歴史上、いや、世界中を探しても居ないのではなかろうか?


 それ程の偉業ではあるものの、せっかく従魔にしたグウィバーは持って数日の命というではないか。


 それでも、ルーカス様であれば何とかしてくれるのではないか? という根拠も何も無いけれども、そんな風に思ってしまう。


 そんな事を思いながらわたくしはルーカス様とグウィバーの成り行きを小竜と共に見守っていると、ルーカス様は何もない空間からマリエルさんを召喚するではないか。


 ルーカス様曰くマリエルさんは精巧にできた感情のあるゴーレムと言っていたのでできる芸当だろう。


 恐らくストレージ(ルーカス様の使っているストレージは何かが違う気がするのだが)は生きている物を収納できない為マリエルさんの事をアイテムと認識しているのだろう。


「お呼びでしょうか? マイマスター」

「あぁ。とりあえず俺の従魔の治療をしてくれないか?」

「かしこまりました。先に従魔の状態を確認させてもらいます……」


 そして、ストレージから出されたマリエルさんはルーカス様の指示を受けてグウィバーの状態を何らかの方法(恐らく、マリエルさんの顔の前に魔法陣は浮かんでいる所を見るに魔術だとは思う)を使って確認しはじめる。


「どうやらこの傷口には強力な呪いがかけられているようです。このまま解呪して傷口を回復させてもよろしいでしょうか?」

「あぁ、かまわない」

「…………マイマスターであればこの程度の事できましたよね? 面倒くさいから私にさせようと思って召喚した訳ではないですよね?」

「当り前だろう? 何を言っているんだ、マリエルは。おかしなことを言うものだ」

「なるほど、という事はどうしても私に会いたい、一秒でも長く私を側に置きたいというマイマスターの欲望を満たす為に私は召喚されたという事ですね。まったく、そう言ってくだされば用事が無くとも自分から勝手に召喚してあげますのに……ぽっ」

「自分から『ぽっ』とか言うのはゾワゾワするからやめてくれ……」


 そしてルーカス様とマリエルさんは談笑しながらグウィバーの傷を一分程で治してしまうではないか。


 規格外だとは思っていたのだけれども、これほどの竜ですら治せない傷を治してしまう光景を見て、これほどとはとルーカス様の認識を改める。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る