第36話 従魔となる事に決まった
「その者も、善の心を持っているようですね……いや、例え善の心を持っていなかろうとも今の私には子供の未来の為に縋るしかない身、善か悪かなどと言える立場ではないですね……。それで、このルーカスという男性が私の娘を引き取ってくれるのですか?」
「ちょっと待ってくれないか? とりあえず現状について説明して欲しいんだけど」
「わ、わかりましたわっ!! じ、実はかくかくしかじかでございますわっ!!」
そしてルーカス様を母親に紹介してみたは良いものの、そもそも何でここへルーカス様を呼んだのかを説明していなかった為、わたくしは一から事の経緯をルーカス様へと説明する。
「なるほど……そういう事か。そこの竜よ、話は聞かせてもらった。この小竜を俺が育てていくのは構わないが、一つ俺と従魔契約しないか?」
「小僧、この私を馬鹿にしているのですか? 今の、瀕死な状態の私を従魔契約をしたところで何の意味があるというのです? 死に行く者に対してあまりにも無礼ではございませんかっ」
するとルーカス様は母竜に対して従魔契約をしないかと持ち掛けるではないか。
それに対して母竜が怒るのも無理はないだろう。
「そう早まるな。従魔契約をすればお前の怪我を治してやろう」
「人の子ごときが、竜であるこの私ですら癒す事の出来なかったこの傷を癒せるなど、にわかには信じがたいが……きっと、藁にも縋りたいという気持ちはこういう事を言うのでしょう。しかしながら、それは従魔契約をしなければいけないという事なのでしょうか? これでも私は義理堅いですので従魔契約をしなくとも受けた恩はしっかりと返させていただきますよ?」
「そうだな……申し訳ないがこればかりは従魔契約をして貰わないと君の受けた傷は回復させてやることはできない。というのも従魔契約の中に回復した方法を他言無用という契約を加えたものをさせてもらいたい。むしろ従魔契約よりもこっちの方が重要なほどだ」
「なるほど、私も他言無用と言われればそれを守るが、確かに口約束では心もとない。そして私の受けた傷を治す程のものが本当にあるのでしたら他言無用にしたいという人の子の気持ちも分かるというもの。良いでしょう。どうせこの身体であれば持って数日しかない命、もし人の子が言う事が嘘であってもどの道死ぬのであれば最後に奇跡を信じてみましょう」
「交渉成立だな」
そしてルーカス様と母竜は話し合い、どうやらご主人様の従魔となる事に決まったようである。
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