第31話 先輩としてのアドバイス


 しかしながらそんなもの、わたくしからすれば自業自得でしかないので心底どうでも良い上に、冒険者であるのならば黙って自分たちの行動の結果を受け入れろと思う。


 自分の行動に責任を持つというのも冒険者として当り前の事ではないのか?


 そんな、中途半端な力を得たからと言って責任を無視して行動するからこうなるのだ。


 この程度の事すら想像できないような連中であれば遅かれ早かれ死んでいただろう。


 その未来をわたくしに出会えたお陰で回避できるかもしれない切っ掛けを与えてやっただけでも感謝して欲しいものである。


「雷鳴の戦乙女に突っかかるなんて馬鹿な奴らだよ」

「まったくだ。よそ者ならばここにいる冒険者たちのヒエラルキーが分かるまではデカい顔などできる筈がないというのに」

「おそらく威張りたいのに前にいた地域では追い出されるか上の者に目を付けられたんだろうぜどうせ」

「だからといって他所に行けば通用するという考えが幼稚なんだよ。あのままじゃぁいつか死ぬぜあいつら」


 そんなわたくしたちを見ていた野次馬たちはひそひそと呟いているのだが、その言葉全てが件の男性に突き刺さっているようで、周囲の声が聞こえて来るたびに苦虫を嚙み潰したかのような表情へと変わっていく。


 その事からも野次馬たちの考察は当たらずとも遠からずといった所だろう。


「ぐ…………お、覚えておけやお前らっ!!」

「おいっ!! 逃げるんじゃないぞっ!! そもそもここのギルドへ拠点を移すって言ったのもお前じゃねぇかよっ!!」

「この落とし前どうしてくれんだよっ!? そもそも金貨三枚なんてどうやって稼ぐんだよっ!! 俺たちギルドカードを無効化されているんだぞオイッ!!」


 そして、今までそんな男性をリーダーにしていたのは自分たちの判断であり、ついて行くと決めたのも自分たちであるにも拘わらず全ての責任をリーダーである男性に押し付けようとする仲間達も、自分の行動の結果を他人に押し付けようとしている時点で反省などしていない事が窺えてくるので、こいつらは恐らく冒険者としての再起はかなり難しいだろう。


「なら一度ソロで頑張ってみたら良いんじゃないかしら? そしたら全ての責任は自分の責任ですもの。金銭に関しては冒険者登録の必要が無いドブ攫いでも何でもやって稼げばよろしいのではないかしら? 恐らくその仕事にあなたたちが捨て去った大切な物があるかもしれませんわよ?」


 そんな男性たちへわたくしは一度底辺にまで落とされた先輩としてのアドバイスをして冒険者ギルドを後にするのであった。

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