第32話 一方的な蹂躙

 


 そんなこんなでわたくしは今冒険者ギルドで取ってきたハルピュイアイ討伐の依頼をこなすために東側にある山へと向かっていた。


「それにしても、ルーカス様が貸し与えてくださったアイテムは本当にどれも便利ですわね……。これら全て、どれか一つでも市民に広がってしまったら魔術師としての存在価値が一気に落ちてしまいますわ……」


 クヴィスト家の持つ領地であるここタリム領の冒険者ギルドからハルピュイアイの住んでいる東の山までは徒歩で三日はかかってしまう程の距離にあるので、普通であれば何の問題も無く依頼であるハルピュイアイの討伐を終えてタリム領まで戻って来たとしても一週間前後はかかってしまうだろう。


 しかしながら今わたくしはルーカス様より貸し与えてくださったこの【小型飛行用魔力装置】である【ホークアイ】に乗って空を自由に飛びながら移動していた。


 この【ホークアイ】なのだが大きな鳥が翼を広げたような形状をしており、その背中にうつ伏せで乗り身体を水平状態にして移動する魔道具である。


 ルーカス様曰く登録している者が魔力を込めながら起動ボタンを押すと起動し、原動力は基本的には空気中にある魔素を使う為上手く行けば魔力の供給無しで無限に飛べるらしい。


 その【ホークアイ】を使って移動すれば目的の所まで一時間前後で行けるのだから、この乗り物がいかにとんでもない事かが窺えてくる。


 そして、わたくしは目的地付近に近づいて来たのでこの【ホークアイ】を『装備型』へと変形させて、背中に翼が生えた状態になって青空を移動する。


 この『装備型』なのだが、移動速度は『搭乗型』と比べて空気抵抗が大きいため遅くなってしまうのだが『搭乗型』ではできない空中で停止したり急停止、急旋回など機敏かつ繊細な動きが可能であり、その場で戦闘するのに適しており、移動型と戦闘型で分かれているという事である。


 これであれば空の上から一方的に糞尿をまき散らされるような事は無く、さらにこちらは【拳銃式自動魔力転送媒体器】を使って上下左右どこへでも遠距離攻撃が可能なのである。


 それに比べてハルピュイアイは糞尿を空から落とす上から下への攻撃と鋭いかぎ爪による近距離攻撃しかない為、制空権は最早無いに等しく、一方的な蹂躙になってしまうだろう。


「見えてきましたわね……」


 そしてわたくしはハルピュイアイの縄張りに入ったようで、地上からこちらに向かって飛んでくる個体がパラパラと目視でき始める。

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