第26話 大きな理由の一つ


「ま、魔力を注げば良いんですのね……? な、何か魔杖のような物が出てきましたわっ!!」


 俺の指示を聞いたリリアナは『良く分からないけれども言われた通りにやってみますわ』という表情を浮かべながらキューブへと魔力を注ぐ。


 するとキューブはボルトアクション式型のライフル銃へと変化していく。


 その銃をリリアナは手に取ると、まじまじと見つめている。その姿はまるで好奇心旺盛な少年のようでもあり、微笑ましく思う。


「ではこれから使い方を簡単に教えよう」

「よ、宜しくお願いいたしますわっ!!」

「一応何かあった時の為にマリエルとサシャはサポートに回ってくれ」

「了解いたしました、マイマスター」

「かしこまりました。ご主人様」


 そして、リリアナには基本的な銃の使い方と複製方法に変化できる銃の種類などを教えた俺は、後はマリエルとサシャに任せて家の中へと戻る。


 その後銃声(火薬を使っていないので耳をすませば聞こえる程度)と。魔弾が的に当たる音が夜中まで聞こえて来るのであった。



◆リリアナside



 あの日、わたくしに【拳銃式自動魔力転送媒体器】を貸し与えてくださった時は今までの苦労が全て報われるような、そんな幸福を感じてしまう程に嬉しかった。


 なによりもわたくしがこの世界で生きていても良いのだという理由をくださったようにも感じる程には、あの日の出来事はわたくしの中ではかなり大きな出来事であると言えよう。


 まぁ、ルーカス様からすれば飼ってた犬が別の野良犬を拾ってきたから、一緒に飼うにあたって玩具も与えよう程度にしか思っていないのかもしれないのだが、それでもわたくしにとってはかなり大きな出来事であった事は間違いない。


 そんな、わたくしにとって大切な一日から既に二年の月日が経っていた。


 今現在わたくしは冒険者業をしており、ルーカス様から貸し与えてくださったこの【拳銃式自動魔力転送媒体器】の技術向上に力を入れていた。


 何よりもこんなわたくしでも強力な魔獣と戦えるんだというのは、二年たった今でも快感を覚える程には中毒性が高く、勿論技術力を高めるというのもあるのだがこの快感を味わいたいという欲求も冒険者をやっていく大きな理由の一つであろう。


 そして、わたくしが冒険者をやるにあたって快く了承してくれたルーカス様にお礼も兼ねて稼いで来た金銭を預けようとしたのだが、ルーカス様は『それはリリアナが稼いできたお金だから』と言って受け取ってくれなかった。

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