第22話 少しだけ豊かになるだけ
そう、わたくしが使えないジャンク品という事はわたくしが一番知っているのである。
もし、本当にルーカス様が言う通りの物凄い魔導武器があったとしても、それを使いこなせるとは到底思えない。
ルーカス様から魔導武器の話を聞いたときは興奮してその事に懸念していたのだが、こうして入浴してリラックスした状態で改めて考えてみると『そもそも【トーチ】しか使えないわたくしが使える魔導武器などこの世にあるとは思えない』という現実を理解してくる。
その現実を受け入れる事は慣れているので、悲しいもののだからといって泣くほどではない。
わたくしに魔術師としての才能が無いと知った時は毎晩泣いたのが今では懐かしく思う。
きっとそれだけわたくしの心は擦り減ってしまったのだろう。
それでも、親に捨てられる程とは思わなかったのだけれども、ある意味でそれがトドメだったのだろう。
わたくし自身もう私を信用する事も期待する事も出来なくなっていた。
「…………今は信用できないかも知れないけれども、きっと明日にはルーカス様の言葉が本当であると気付くはずよ。だって私がそうだったもの」
そんなわたくしにサシャは優しい声音でそう声をかけてくれるのであった。
◆主人公side
「お父様、お話したい事とお願いしたい事がございます……っ」
「……そこの女の子の事かい?」
「はいっ! そうですっ!」
リリアナをお風呂に入れたあと、マリエルを呼び出してドライヤーで髪を乾かし、ヘアアイロンで髪の毛をセットし、派手過ぎず、けれどもリリアナに似合う服をコーデしてもらう。
因みにドライヤーもヘアアイロンも衣類も全てネット通販で購入してある。
まさか、ストレージで購入したものがストレージへ届けられるサービスがちゃんと機能してストレージへと届けられるとは思わなかったので嬉しい誤算である。
正直なところ前世で暮らしていた星と今生きている星との距離を考えると離れすぎている為届ける事ができないと勝手に決めつけていた為今まで気付く事ができなかったのだが、そもそも『ストレージ内の物をこの世界に出せる』時点でその可能性は普通にあった訳である。
だからといってもストレージで購入できる事を知らなかっただけでストレージ内にある物が使える事は知っていたので、今よりも暮らしがほんの少しだけ豊かになるだけなのだが、そのほんの少しが実は大きかったりする。
因みに金銭は俺が別名義で、前世で特許を得ているオリジナル魔術によって稼いだ使用料によって死ぬまでに使い切る事が出来ない程の額を稼げているので今のところ何の問題も無いだろう。
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