第21話 安心させる為についた嘘


「そんな、わたくしでも扱えるそんな夢のような魔導武器があるんですの……?」


 そして俺の話を聞いたリリアナは、目をキラキラして半信半疑に聞いて来るではないか。


「あぁ、存在する。何ならリリアナであれば帝国に所属する宮廷魔術師、いや……世界各国最高峰の魔術師であろうとも凌駕できるほどの圧倒的な力を手にする事ができると約束しよう」

「そ、それはいったいどんな魔導武器なんですのっ!?」

「そうだな、明日にでも実物を貸し与えてやるから今はまず俺のお父様に挨拶をする為に、その汚れた身体をお風呂で綺麗にしてこい。サシャ、頼んだぞ」

「なっ……わ、わかりましたわ……っ」

「かしこまりました、ご主人様」


 とりあえず今すぐにでもその魔導武器を教えて欲しいというのがその表情からも、そして言動からも伝わってくるので、まずあお父様への挨拶と、その為の身だしなみが先決であると返すと、流石のリリアナでもしぶしぶと言った感じで了承してくれる。


「それではご主人様、リリアナをお風呂に連れていってまいりますっ」


 そしてリリアナはサシャによってなかば強引に引きずられるように連れていかれるのだった。



◆リリアナside



 まさかわたくしの新しいご主人様が帝国貴族、それも公爵家長男であるお方であるとは思いもしなかった。


 これは幸運と呼ぶべきか、それとも元家族と出会う可能性が高くなったと悲しむべきか……。


 いや、ルーカス様の話が本当であれば復讐できる機会が増えると喜ぶべきなのだろう。


 そのシーンを想像するとワクワクするしゾクゾクするのだが、本当に魔術の才能が全くないわたくしにとっては夢物語でありそんな都合のいい魔導武器など存在しない事くらいわたくしでも理解している。


 きっとルーカス様がわたくしを安心させる為についた嘘なのだろう。


 でも、その優しさだけでも今のわたくしにとってはかなり嬉しく思う。


 そもそも、ここ数年間わたくしは人から優しくされた事など全くと言って良いほど無かったので、それだけでルーカス様の奴隷となれて良かったと、あの時勇気を出して良かったと思う。


「心配しなくとも大丈夫だわ。ご主人様は必ずあなたに復讐できるだけの力をくださるもの。もうなにも心配する事はないわ」


 そんなわたくしに、一緒に入浴場へと来ている同じルーカス様の奴隷であるサシャさんが『心配ない』と声をかけてくれるではないか。


「そう……それならばどれだけ良かったことでしょう。ですがわたくしの事はわたくしが一番理解しておりますわ。ですが、心配してくださったその優しさは嬉しく思いますわっ」

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