第20話 脳筋仕様の魔導武器


 そしてリリアナは自分の事を伯爵であるゴールド家の娘であると言うではないか。


「ほう……あの魔術で有名な名家ではないか。つい最近でも討伐ランクSの魔獣、怪鳥アエローの討伐部隊に配属され活躍したとの噂も聞くゴールド家が娘一人育てられない程貧乏な訳がないとは思うのだが……まぁ色々あるのだろう」

「……隷属してから言うのは卑怯だとは思うけれども…………わたくし、魔術の才能が無いのですわ。行使できる魔術は魔術段位すらない生活魔術の【トーチ】くらいですもの。魔術師としての誇りとプライドだけで生きているゴールド家からすればわたくしなど恐らくどこかの平民の娘と取り替えられた出来損ないの娘と思われても仕方がないですわ……」


 そういうリリアナは、俺に話すと言うよりかは自分にそう言い聞かせているように聞こえる。


 ゴールド家といえば確か俺と同い年の娘がいるという話は聞いた事があるのだが、それが本当であれば、まだ十歳の娘からすればそう思わないと心が壊れてしまうのだろう……。


「仕方がない? そんな訳がないな」

「……え?」

「そんなもの、娘の才能を開花させてあげることができない大人の責任であって全てを子供のせいにするというのは実に情けないと思わないか?」

「け、けれども実際にわたくしは【トーチ】で周囲を明るくする事くらいしかできないですわ……」

「それは今までのはなしだろう? 俺に任せて貰えればゴールド家がリリアナを捨てた事を後悔させてやるくらいの大魔術師にしてあげよう」


 そして俺はそうリリアナを慰めながら、彼女の魔力量を目に移植した測定魔道具で測る。


 すると、名門の産まれだけあって彼女の魔力量は一般的な魔術師よりも遥かに超える量の魔力量を有しているようなのだが、その魔力を供給するパイプがその膨大な魔力量に耐え切れずに損傷してしまっている事が窺える。


 これは、産まれたばかりに対処すれば問題なく治るのだが、リリアナは既に十歳と損傷した状態で固定化されてしまっているようである。


 その事をリリアナに告げると、彼女は目をぱちくりとして呆けているではないか。


「だからリリアナに魔術の才能が無いのはその事を見抜けなかった両親を含めた周囲の大人のせいであり、リリアナが悪いわけではない。そしてそんなリリアナにぴったりな、脳筋仕様の魔導武器があるんだなこれが。まぁ極めれば技術力も問われるのだが、最悪もう面倒くさい時は脳筋な戦法でも十分に脅威であり、初心者でも簡単に扱える武器かな」

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