第18話 きっと気のせいだろう
「よし、これでリリアナは俺の奴隷だな。よろしく。因みにルーカスという名前だ」
「…………」
「どうした?」
「何も聞かないんですの?」
奴隷の契約者変更を終えた俺はリリアナへ自己紹介をするのだが、返事をせずに俺の顔を見つめて来るだけなので何かあるのかと確認してみると、どうやら俺がリリアナの事を根掘り葉掘り聞いてくると思っていたらしい。
「リリアナの過去を聞いてどうなる?」
「…………え?」
しかしながら俺からすればリリアナの過去などどうでも良く、大事なのは俺の大切な駒となるかどうかでしか無いので、その部分は隠しながら過去を聞いてどうなるのかというのか。
「リリアナが俺に過去を話したい、話した方がスッキリするというのならば聞いてあげるが、そうでないのならば別に話す必要はない。それは俺がリリアナに興味が無いのではなくて、重要なのは何をして来たのかではなくこれから何をしていくかだと思っているからだ」
「……ありがとう」
何となくではあるのだがリリアナは自分の過去を聞いて欲しくないような雰囲気を感じ取っていたというのもあるのだが、その事についてはあえて説明はしないでおく。
わざわざ『フルネームを言わないからそう感じた』と言う必要も無いだろう。
「でも、溜め込み過ぎるのも良くはないとも思っているから吐き出したいと思う時があればいつでも吐き出してくれて良いからな?」
そして俺はそういうとリリアナの頭を撫でてやる。
「このわたくしが、年もそう変わらない子供にあやされる日が来るなんて……」
そういうとリリアナはそっぽを向くのだが、その横顔は少し前までの表情よりかは幾分和らいだように見えるがきっと気のせいだろう。
◆
「さて、ここが俺の家だ。これから両親にリリアナの事を説明しないといけないんだけど、その前にお風呂に入ってきてもらおうか。お風呂の入り方が分からないのならばサシャを付けるから聞いてくれればいい。サシャもリリアナの事をサポートしてくれ」
「わ、分かりましたわ……っ」
「かしこまりました、我がご主人様」
今回の賊討伐を終えてサシャの雰囲気がガラッと変わったのだが、どうやら彼女の中ではこのまま中二病設定を貫いていくようだと感じ取った俺はそこを刺激せずに気付かない振りをする。
うん、年相応で良いじゃないか。
それに、俺が前世で中二病が発症したのは意外と早く小学生高学年の頃であったのだが、その頃は鼻の上や頬に、怪我をしていないのに絆創膏を貼ったり、木の棒を伝説の剣に見立てて駆けずり回ったりとしていたので、それと比べるとやんちゃ型ではなく大人しい型の症状であるサシャはまだマシだろう。
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