第17話 力をくださいまし
「それができるとしたら?」
「…………恐らくわたくしの事を思ってそんな事を言っているのでしょうけれども、そんな嘘で騙される程わたくしはバカではございませんわ。これでも奴隷として親に売られてしまう前までは伯爵の娘として教育をそれなりに施されていたんですもの」
「あっそう。まぁいきなり見ず知らずの者を信じろというのも難しいのは分かるのだが、君を助けた少女の姿を目にしても信じる事が出来ないというのであれば、千載一遇のチャンスをそうやってこれからも逃していくと良いよ。まぁそんなチャンスが再度君に訪れるとは思えないけどね。あと、俺は君を奴隷商に売るつもりも無いから野良奴隷として人に怯えながら好きに生きたら良いんじゃない?」
確かに少女の言う通り、見ず知らずの人間、それも自分と同じくらいの年齢であろう子供が、自分でも現状を変える事ができなかったというのに『俺ならばその状況を変えることができる力を与える事ができる』と言われた所で、信用などできよう筈がないのも分かる。
それも、自身の無力さを知っているのであれば猶更であろう。
しかしながら、そうやって盲目的に考えている状態では目の前に蜘蛛の糸が垂れていたとしても一生気づく事もないだろう。
「ま……まちなさいっ!」
そして俺はそう言い残してこの場を去ろうとしたその瞬間、少女に止められる。
「どうした? 自分の可能性も俺の事も信用していないんだろう?」
「…………ごめんなさい、その事について謝るわ……。どうせ人生を諦めるのならば貴方の口車にのって騙されたと分かってからでも遅くないわ……。だから、わたくしにも彼女と同じ、いえ、せめてわたくしの事を『価値ない』と捨てた奴らを見返せる事ができるだけの力をくださいましっ!!」
俺は彼女のその言葉を聞き、労せず俺の仲間になりそうな奴隷を確保できそうだと思わず口元が緩んでしまうのが自分でも分かる。
「……分かった。とりあえず奴隷契約している主であろうジョン・マレルが死んだ事により空白となった主を俺へと書き換えるが、良いか?」
「かまわないわ。もし復讐できるのであればそれが例え悪魔であろうとも喜んでわたくしは了承いたしますわ……っ」
「分かった。それで君の名前を教えてくれないか?」
「…………わたくしはリリアナ。家名を名乗る事すら許されていない今のわたくしはただのリリアナですわ……っ」
彼女の返事を聞いた俺は早速彼女の名前を聞き、彼女の太腿にある奴隷紋に手を添えて俺の魔力を流し込みながら奴隷の主変更をしていく。
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