第15話 黒歴史にしてあげるべき



 そして私は少しずつジョンの肉を削いでいくのであった。



◆主人公side



「スッキリしたか?」

「…………えぇ、スッキリしたし、やっと過去の呪縛から解放されたような清々しさもあるわね……。両親の仇を過去の呪縛と言うのは、すこし違った言い方があったかも知れないけれども、それでも私はこの四年間その事しか考えられなかったし、それが生きる目標だったもの」


 そしてサシャはそう言うと俺の胸の中で泣きわめく。


 復讐は何も生まないだとか、虚しいだけだとかそう言う者も中にはいるかも知れないのだが、それでも俺はされた事の程度にもよるのだが、復讐は行った方が良いと思っている。


 でなければこういうサシャのような人は報われないではないか。


「よく頑張ったな」


 そんなサシャを俺は頭を撫でながらあやす。


 なんだかんだ言ってもまだ十歳なのだ。


 いくら俺が魔術を教えて【魔力式装備鎧】を貸し与えたといえども、その小さな身体で受け止めるには重すぎたのだろう。


 本当に良く頑張ったと思う。


 そして、あれから小一時間ほど俺の胸の中で泣いた後、目元を真っ赤に腫らしたサシャは俺の前で膝を突き、首を垂れるではないか。


「この誇り高き白狼族であるサシャ、ご主人様にこの命を捧げましょう」


 咄嗟の事で反応が遅れてしまったが、流石にこれはどうかと思った俺はサシャの頭を上げさせようとする。


 しかしながら俺がそうするよりも早くサシャは俺に命を捧げるなどと言うではないか。


 ははーん、なるほど。そういう事ね。


 サシャの、この中二病的な発言に俺はピンとくる。そう考えれば確かに首を垂れる動作も中二病っぽいと言えばぽい動作だしな。


 これは恐らく子供特有の憧れからくる行動なのだろう。サシャもそういうのが好きなお年頃という訳である。


 両親の復讐を果たして様々な感情が一気に押し寄せた結果涙を流し始めるのだが、その涙と一緒に心のつっかえていた怒りや悲しみ、恨みや憎しみ等といったドロッとしたものが流れ落ちたのだろう。


 その結果、騎士に憧れる年相応の感情が残り、復讐を果たしたばかりという特殊な環境や、それによって興奮もしていただろう事を考えると、このサシャの突発的な行動はそういう事なのだと、俺の脳は瞬時に判断した。


 これは茶化してはダメな奴だし、冷静に対処するなどもっての外だと。


 この場合の答えは俺も乗ってあげる事こそが唯一の正解であり、そして大人になって思いかえす時に身もだえする黒歴史にしてあげるべきなのである。


 サシャは子供っぽさが無いのがここ最近心配ではあったものの、ちゃんと子供っぽいところがあって何だかんだで安心してしまう。

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