第12話 蟻程度であれば誤差の範囲


 そう思うのと同時に、私がこの短期間でいかに強くなったのかというのが分かる。


 確かに、今の斬撃による攻撃は私の強さというよりかはご主人様から貸して頂いている【魔力式装備鎧】のお陰なのだが、あの程度の斬撃であれば【魔力式装備鎧】を装着しなくても今の私ならば同じレベルの斬撃を飛ばす事は造作もない。


 それは、この四年間ご主人様によって強くなる為に色々と教えて貰ったお陰であり、正直言ってご主人様が私に教えてくれる様々な内容は、世界の常識が変わってしまう程の内容である事は間違いないだろう。


 その内容の凄さは、私が四年間でこの程度の賊であれば一人で潰せてしまえると思える程の力を手にできる程と言えば分かりやすいだろう。


 流石に【魔力式装備鎧】を装着した時のように国を一人で墜とせる程とは思わないのだけれどもそれでも破格の力を手にする事ができたのは間違いない。


 そして、ご主人様が奴隷を欲しがり、そしてその奴隷として私を選んだ理由というのも今ならば理解できる。


 これほどの情報を外に漏らす可能性がある時点で奴隷以外に伝授するというのはあり得ず、そして真剣にご主人様の教えを乞うモチベーションもまた必要であった為、奴隷であり復讐心に囚われていた私が最適であったのだろう。


「貴様っ誰だっ!? どっから入ってきやがった小娘っ!!」

「どっからって真正面からに決まっているわ」

「嘘を吐くなっ!! 正面には見張りとして二人の護衛がいた筈だっ!! その護衛は冒険者ランクで言うとBランクに相当する実力の持ち主なんだぞっ!? そんな二人をたかが小娘一人に殺られる訳がない上に、戦闘になった場合必ず片方がその旨を中へ伝える筈であるし、そもそも戦闘音が一切聞けなかったぞっ!!」


 正直に正面から入って来たと言うのに、この男は一向に信じようとしないどころか、何故かキレ始めるではないか。


 その声に何事かと洞窟の奥からわらわらと仲間が何事かとやってくるではないか。

 

「……例えば、地面に蟻が這っているとするじゃない?」

「あっ!? それがどうしたと言うんだっ!!」

「それを指で潰すのに戦闘音など聞こえて来るかしら? そして一匹だろうと二匹だろうと蟻程度であれば誤差の範囲でしょう。そして、蟻など何匹集まろうとも脅威になどなり得ない」

「…………あ?」

「お嬢ちゃん、そいつはちょっと聞捨てならねぇなぁ……」

「一回痛めつけて勘違いしている価値観を、きっちりと正しく教えてやるのが俺たち大人の仕事だよな……っ」

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