第11話 なんとあっけない事か


「【魔力式装備鎧】通称MEAだな。これは空気中の魔素、または使用者の保有している魔力を原動力に動く……そうだな、魔道具と防具と武器が一体化した装備品だと思ってくれればいい。そしてサシャに与えた【魔力式装備鎧】なのだが白狼族に合わせて狼モデルの【魔力式装備鎧】を選んで置いた。うん、やっぱり似合うな。それに黒と白が映えるじゃぁないかっ」

 

 なんだろう、獣耳美少女に機械的な装備……これが芸術というものだろうか?このミスマッチかつアンバランスな感じがグッとくるものがある。


「……これ、本当に凄いのかしら?」

「それはサシャ次第だな。どんなに凄い武器だろうとも使い手が上手く使う事ができなければ宝の持ち腐れだろう。そして、そうならないように俺がこれからしっかりと指導していくから安心しろ。しかしながら今日はもう遅いから本格的な指導は明日からだな。とりあえず今は『復讐を遂行できる強さを与える事ができる』という事が分かって貰えればそれで良い」

「……………」


 そう説明する俺を、サシャは真剣な表情で見つめるのであった。



◆サシャside



 ルーカス様の奴隷となって四年が過ぎた。


 初めこそルーカス様を、私たち白狼族を笑いながら殺し、犯した奴らと同じノーマンという事でかなり警戒していたし敵意も向けていたのだが、今となってはそんな当時の態度がルーカス様に対してあまりにも失礼だとシバきたい程には後悔しているし、忘れたい過去の一つである。


 そんな生意気だった私にルーカス様は叱るでもなく怒るでもなく【魔力式装備鎧】という、どう考えても奴隷に貸し与えるようなレベルではない道具を貸してくださったのである。


 この【魔力式装備鎧】だが、当初こそこんなものを付けたところで白狼族には鉄をも切り裂く爪と牙と並大抵な打撃技など弾いてしまう鋼の肉体があるのでむしろ邪魔になるのでは? と思っていたがとんでもない。


 これ一つで間違いなく国一つ墜とす事ができるのではないか? と思えてしまう程にはヤバい代物であった。


「準備はいいか?」

「えぇ、勿論だわ……っ!」


 そして今日。


 やっと私はあいつらに復讐する事ができる。


 実に長かった……。


 そして私はキューブを起動して人型モードで装着すると黒い仮面を被ると、賊たちが拠点としている洞窟へと駆けていく。


 その洞窟の入口、門番は二人。


 その二人の首を、音もなく離れた場所から斬撃を飛ばして切り落とす。


 あっけない。


 なんとあっけない事か。


 




 

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