第10話 魔力式装備鎧


「これは……何なの? そもそも、異世界から転生って……そんな私には何が何だか分からないわ……っ」


 まだ六歳のサシャには異世界という概念が難しかったようで、必死に理解しようとしている姿は年相応に見え微笑ましく思う。


「まぁ、この星ではない別の星で生きていたけど、死んでしまってこの星で今のルーカスとして生まれ変わったという事かな?」

「……良く分からないけれど、前世の記憶を持っているっていう訳ね」

「そんな感じだな」

「あと、この四角い物は何なの?」


 とりあえず噛み砕いて説明する事である程度理解してくれたようで、サシャは次いで俺が渡したキューブについて聞いて来る。


「これは、さっき話した前世で使っていたストレージを今世でも使えたみたいで、そのストレージに入っている装備品の一つだな。とりあえずサシャをこのキューブの使用許可設定するから、痛いかも知れないけどこの果物ナイフで血を一滴垂らしてくれないか?」

「……分かったわ。どうせ命令されたら抗えないのだし……………………………………っ」

「…………痛いのが怖いのか?」

「そ、そそそそっ、そんな訳ないじゃないっ!! やれば良いんでしょっ!? やればっ!! 見てなさいよっ!! こ、こんなもの怖くも何ともないんだからっ!!」


 とりあえずこのキューブの使用許可を出すには登録者の血液が必要なのでサシャに果物ナイフを渡して血を一滴垂らすように言うのだが、一向に行動に移さないサシャを見て『確かに子供は注射とか苦手だよな……』と温かい目で見守ってしまいそうになる。


 しかしながらこのままでは埒が明かないので、けしかけてやるとサシャは文句を言いつつも目をぎゅっと瞑って果物ナイフで人差し指をサッと切ると、キューブに血を一滴垂らす。


「よく頑張ったな」

「こ、これぐらい余裕よ……っ。もう子供じゃないんだからっ」


 そんなサシャを労いながら俺は回復魔術で指の傷を治してやる。


「さて、このキューブにサシャを登録したから、サシャも使えるようになったぞ。そしてこのキューブの使い方なんだが、サシャの魔力を注いでみてくれ」

「わ、分かったわよ……きゃぁっ!? こ、これは一体なのっ!?」


 そしてキューブにサシャを登録し終えたので、そのままキューブにサシャの魔力を注いでみるように促し、サシャがキューブへと魔力を注ぐ。


 するとキューブが空中で回転し始め、次の瞬間にはサシャの身体に合ったサイズの、黒光りする【魔力式装備鎧】通称MEA(Magic・Equipment・Armor)が装着されており、どうやら無事起動してくれたようで一安心だ。

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