第9話 変わった奴
そう俺が言うと少女は腕で目を擦り涙を拭き取ると、憎しみや怒り、憎悪と言った感情が籠っていた目に、新たに復讐と決意という感情が籠った瞳で俺を見つめてくる。
「…………」
「…………」
「……さすがノーマン。人の心に入ってくるのだけは得意ね……。良いわ、今回だけは騙されてあげる。どうせどんなに喚いたところで私は奴隷だもん。……でも、もしその話が嘘ならば、私の命と刺し違えてでもその首元を噛みちぎってやるから……っ」
「うん、それで良いと俺も思う」
「……変わった奴」
数秒の間見つめ合うと、俺の決意の強さに気付いたのか白狼族の娘は俺の口車に乗る事にしたようである。
「良く言われるよ」
「……ふんっ。それで、奴隷として私は何をすれば良いの? 貴方の奉仕でもすれば良い? どうせそのために私を買ったのでしょう? このませガキ……っ」
「流石に今の君に奉仕されてもな……もっと女性らしい大人のお姉さんならばいざ知らず……。むしろそんな事を真っ先に思いつく君の方がませガキなんじゃないのか?」
「なっ……っ!?」
そして、白狼族の娘は奴隷として奉仕すれば良いのかと聞いてくるのだが、一番にその事が頭に思う浮かぶ時点でませガキなのは君の方だろう……。
その事を指摘してやると白狼族の娘は顔を真っ赤にしながら言葉に詰まり、言い返したいが言い返せる言葉が思いつかないのか口を鯉のようにぱくぱくとしている姿が、子犬が必死にうなっている様に見えて妙に可愛く見える。
「取り敢えず、これから何かをする話をする前にお互いに自己紹介をしようか。俺はルーカス・フォン・クヴィス。ここ帝国公爵家の一つであるクヴィスト家の長男だな」
「……やっぱりそんな人が私みたいな奴隷を買うだなんてどう考えてもおかしいと思う……しかも奉仕が目的じゃないなんて……」
取り敢えずこの娘の名前をまだ知らないのでまずは自己紹介からと思った俺は、自分の自己紹介をし始めるのだが、それを聞いた白狼族の娘は訝しんだ目を俺に向けながらぶつくさと呟く。
「まぁ、良いわ。……私は誇り高き白狼族、白銀の牙オーガロンの娘サシャよ……。それよりも貴方、大人がいる前と口調や雰囲気が違うのは何故なの?」
「そうだね……君を復讐できるまでに強くする為にはその事をまず説明する必要があるな。俺、実は違う世界からの転生者なんだ」
俺はそう言うと、一辺四センチほどのキューブ型をした黒いものをストレージから取り出すと、サシャへと手渡す。
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