第8話 こいつを利用して復讐してやる
なるほど、それならばノーマンである俺に対して怒りを露わにするのも理解できるというものである。
「気に入った。 お父様、この子にしますっ!!」
それは即決であった。
この子の内なる憎悪を感じ取った時、俺はこの子しかいないと思ってしまった。
それは可哀そうや救ってあげたいとか言うのではなく『同士』として俺がこれからやろうとしている事に賛同してくれるという、根拠のない、運命のようなものを感じ取ったような気がした。
「……ルーカスはそれで良いのか? まだ他に奴隷がいるのだが、見なくていいのか?」
「えぇ、かまいませんっ」
「そうか……。ではトーマス殿、この白狼族の娘をください」
「かしこまりました」
そして俺の意志が固い事をお父様に伝わり、この娘を俺の奴隷にする事が決定したのであった。
◆
「では、お父さんはこの書類作業があるから自室で仕事をするけど、ルーカスは奴隷と仲良くするんだぞ?」
「はいっ! お父様っ」
あの後、白狼族だという同い年の娘を奴隷にして、そのまま家へと帰り、今はその娘と自室に二人っきりとなった。
「初めまして。俺は君の新しい主となるルーカスだよ?」
「…………」
とりあえずは挨拶と自己紹介からと思った俺は彼女に話しかけるのだが、相変わらず怒りの籠った鋭い視線を俺に向けて来るのみである。
ちなみに俺が今回購入した奴隷なのだが、白狼族というだけあって髪の毛は真っ白で、腰まで伸びており、三角の耳がピンと立っており、その毛先だけは黒くなっていた。目の色は水色で、まる透明度の高い湖を覗き込んでいるような感じで引き込まれそうなほど美しい瞳をしていた。
そして尻尾も真っ白であり、耳同様に毛先だけ真っ黒である。
その姿は、まるで白い狐のようにも見える。
しかし、狐のようだと言うと更に怒りそうなので言わないが。
「そう敵意を剥きだしにしなくても良いとは思うけどな」
「…………」
「むしろ俺は君の仲間と言っても過言ではないだろう。それこそ、君の復讐を手助けする事ができるし、してあげたいとも思っている。その為にはまず君との信頼関係を構築しなければならないんだよね」
「…………嘘だ。ノーマンはそうやって私たちを騙して来た……っ!!」
そう叫ぶ白狼族の女の子の目は涙で溢れていた。
余程悔しかったのだろう。それこそ俺には想像できないくらいには……。
「そうだね……。だから信用しろとは言わない。けれども『こいつを利用して復讐してやる』と思うのはどうかな?」
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