第7話 簡潔に真実を教えてくれた
それでも皆どことなく目の奥に影があるように見えるのは、親から虐待を受けていたからなのかもしれない。
確かに、俺でも実の親に売られたとなったら『自分はいらない子』だと思ってしまうかもしれないし、それまでに虐待を受けているのであれば猶更だろう。
「男性はいないのですか?」
しかし、そんな中でも男性がいない事に気付いたので奴隷商のオーナーであるトーマスへ聞いてみる事にする。
「そうですね、いない事は無いのですが現在この店舗ではルーカス様と同年代の男性奴隷は取り扱っておりません。また極端に少ないのですが、その理由に肉体労働をさせる事ができるというのと、平民と言えども長男を跡継ぎにというのは多くそれだけで売りに出す数は減ってしまいます。しかしながら女性の場合は色を売らせる親も多いのですが、基本的にこの年代の子供たちを売ってくる親というのは色を売れるような年代まで育てる余裕がないから売るのです。そして年端もいかない男性は、男児が産まれなかった家、それこそ平民から貴族まで引く手あまたであり直ぐに売り切れてしまいます」
なるほど……男児は親の奴隷に、女児は見知らぬ者の奴隷に……という訳か。
それに、確かに前世でも少数民族や田舎の地方では『男児は誘拐されるから女性の恰好をさせる』という風習が世界各地で意外と多い事を思い出すと共に、俺が生まれ育った日本でも未だに田舎の方では『男性を産まなかった』というだけで義理両親から酷い扱いを受けるという話を聞くくらいである。
俺から言わせてもらえれば狂った価値観だとは思う。
「しかしながら暴力を振るう親の奴隷になるよりかは、こうしてルーカス様のような人の奴隷になる方がこの子たちにとっては幸せなのかも知れないとは、我々は思ってしまうのですが『親に売られる』というのは我々が思っている以上に精神的にダメージがあるようで、どちらがこの子たちにとって幸せであるのかは分からないのです」
そう言うトーマスさんの目は真剣そのものであり、俺の中の奴隷商人というイメージが崩れていく。
そんな会話をしながら俺は奴隷たちを見て周るのだが、一人だけ俺に敵意を剥きだしにしている狼の獣人の女の子と目が合う。
「この子は……?」
「………………この子はノーマンによって構成された山賊によって村を焼き払われ、両親や村人を殺され、若い女性は慰み者にされた後に殺され、茂みに隠れて難を逃れのですが、後に訪れた商人によって保護され私の所へ奴隷として売られた者です」
俺はこの娘の事を聞くと、トーマスさんは説明するかどうか迷った後に、俺へ簡潔に真実を教えてくれた。
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