第5話 どうしても譲れない部分
◆
「どうだい? お父さんが治めている領地は?」
「はいっ! 領民たちはどの地区でも皆イキイキと生活しており、とても活気のある領地だと思いますっ!!」
あれから約三日間かけてお父様の治めている領地にある主な街三か所、ノーマンが多い第三次産業地区、獣人が多い第一次産業地区、エルフやドワーフなど他種族入り混じった第2次産業地区を巡ったのだが、どの街も活気があって素直に『良い領主に恵まれた、良い領地』であるという感想が真っ先に来るので素直にそれを伝える。
そういうとお父様は誇らしげに頷くと、俺の頭を撫でてくれる。
「ルーカスは良い領主になりそうだな」
「はいっ!! お父様のような立派な領主になりたいと思っておりますっ!!」
「それは良い心がけだな。しかし、そんな我が息子が人を信用できないから奴隷が欲しいとは……どこで子育てを間違ってしまったのだろうか……」
そしてお父様は嘆くのだが、これに関してはどうしても譲れない部分であるので、諦めてもらうしかないだろう。
「すみませんお父様。こればかりはどうしても譲れないのです……。勿論お父様とかは信用しておりますが……」
「いや、良いんだ。これも貴族ゆえにあまり人を信用するなと言って聞かせ育ててきてしまった私たちのせいだからな……。だけど、いつか本当に信用できるような人を一人でも見つけられればと思っている」
「善処しますっ!!」
幸か不幸か俺の極端な人間不信は両親による『あまり人を信用するな』という教育の結果だと勘違いしてくれているので、別段俺が転生者であると疑われてしまうような事は今のところないのが救いだろうか?
それでもやはり両親に心配をかけてしまっているという罪悪感が無いわけではないので、少しばかり申し訳ないと感じてしまう。
「それでも人が嫌いという程酷い訳ではないので今はこれで良いか。奴隷ですら身近に置けないとかであればこれからの学園生活などを考えれば護衛にできる者がいないという状態よりかはまだましだろう」
そんな会話をお父様としていると、馬車が止まったようだ。
どうやら目的地である奴隷商へと着いたようである。
「では行こうか? ルーカス」
「はいっ!!」
そして俺はお父様に手を引かれながら馬車を下りると、そこには石造りで出来た豪華な奴隷商がそこにあった。
「ようこそお越しくださいました。ダニエル様、そしてルーカス様」
そんな俺たちを奴隷商のオーナーであろう年老いてはいるもののできる執事のような男性が出迎えてくれる。
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