第68話 魔法の階
地下1階はさっきより明るかった。ところどころの壁に火のついた松明が掛けてある。親切な奴だ。これで松明を持って歩かなくて済む。だがダンジョン攻略は難しくなるのだろう。キノコ怪人はさらに強い魔物を用意しているに違いない。
しばらく行くと大きなとんがり帽子が躍り出た。いやその下には光る眼をしたずんぐりむっくりの小さな黒い人影がいる。妙にバランスが悪い姿でユーモラスでもある。だがこいつは魔法を使って攻撃を仕掛けてきた。
まずは石の魔法だ。訳の分からない呪文を唱えると石が飛んできた。俺は棍棒で打ち返し、ペロは俊敏な動きで避けた。すると次は水を激しい勢いで放水してくる。俺たちを吹き飛ばして流そうとするほどだ。俺は動き回ってそれを避けた。すると今度は木のつるのようなものを出して俺たちを縛ろうとする。
魔法だから遠隔攻撃ばかりだ。見るからに弱そうだから俺は接近して叩きのめそうとした。だが見えない透明な壁にぶつかった。どうも結界を張っているらしい。棍棒で結界をぶっ叩いてみたがびくともしない。もちろんペロも飛びかかろうとしても結界に阻まれている。
「厄介な奴だ!」
こんな奴は魔法の遠隔攻撃でやっつけるのが手っ取り早いそうだが、あいにく俺もペロも魔法攻撃はできない。この魔物自体のレベルはあまり高くないよう思えるのだが・・・。
「そうだ! ペロ! あいつにしゃべらせろ!」
俺は思いついてペロに言った。ペロはその魔物に念を送った。するとそれは急に直立不動になりしゃべり出した。
「こんなことをしてどうするのですか?」
「それでいいんだ。ペロ。お前はこいつを操れるんだな」
「ええ」
「それでいいんだ。これでこの魔物をおさえることができたから。この先を進もう」
ただの思い付きだったが、うまくいった。それでこの帽子の魔物を連れていくことにした。役に立ちそうな気がしたので・・・。
またしばらく歩き回るうちにまた魔物に出会った。今度は黒い体に長く鋭い口、尻尾を持つ魔物だ。雰囲気から言ってドラゴンというものかもしれない。そいつもやはり魔法で攻撃してきた。口から火の玉を投げつけてきたのである。
「こりゃ、まずい!」
俺は必死に棍棒で打ち払ったが、火の玉だからかなり熱い。このままでは燃やされてしまうと思ったほどだ。だがこんな時、さっきの帽子の魔物が役に立った。ペロが念を送って水の水流を浴びせたのである。さすがの火の玉も水にはかなわない。火は消え、ついでにそのドラゴンも吹き飛ばした。そこを俺は棍棒で殴りつけるだけである。
こうしてドラゴンは倒した。するとまた棍棒が落ちている。今度は金属製だ。
「これで2刀流だ!」
俺は両手に棍棒を持った。どうもこの階は魔法系の魔物がいるようだ。帽子の魔物を連れているから攻略は簡単だ・・・と思ったらとんでもないものが出てきた。
しばらく行くと魔物がいる気配がした。角を曲がるとそこに待ち構えているのがわかった。俺は棍棒を構えてゆっくり近づいて行った。だがペロはじっとしていられず、先制攻撃をしてやろうと角を曲がって向かって行った。だが何かが倒れる音がして動いている気配が全くなくなった。
(おかしい!)
俺はすぐに行くのを我慢して耳をそばだてた。魔物と戦っているはずだが、そこからやはり音が聞こえない。待っていてもペロは戻ってこない。曲がり角の向こうで何かが起こったのは確かだ。ちょうど持っている金属製の棍棒は鏡のように磨き上げられている。これをちょっと曲がり角の外に出してそこに映るものを見た。
「あっ! こいつは!」
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