第66話 ゾンビ

 ダンジョンを進むと他にもクモの化け物とか、幽霊のような奴とか魔獣が出てきた。俺もできるだけ戦ったし、ペロが大いに活躍してくれた。

 そして戦って倒した後にいろんなものが落ちていた。兜や盾、薬草だとか・・・。しかしカバンを持ってこなかったし、持ち歩くわけにはいかないのでそのまま置いてきた。だから今、俺が持っているのは木の棍棒だけだ。後から聞いた話ではダンジョンの攻略に必要な物だということだったのだが・・・。


 しかしこのダンジョンってやつは厄介だ。行先など示してくれないどころか、迷路になっている。同じところをぐるぐる回ったり、行き止まりにぶち当たったりする。俺の方向感覚ではとてもじゃないが無理だ。やはりこんな時もペロだ。においをかいだり、時にはおしっこ《マーキング》して自分たちの位置を把握しているようだ。最初は俺が先頭を歩いていたが、こうなったらペロについていくだけだ。ペロを連れてきて本当に良かったとつくづく痛感した。


 やがてダンジョンの中心部に向かうにつれて魔獣が強くなってきていた。今、目の前にはアナコンダのような大蛇がいる。ペロが唸り声を上げて威嚇している。相手は強そうだが大丈夫かと思っていたら、急にペロが後ろを向いて逃げ出した。


「おいおい! どこに行くんだ?」


 俺はペロを追いかけた。どうもペロは蛇が嫌いなようだ。そういえば散歩の途中、小さな蛇と出くわした時は固まっていた・・・そんなことはどうでもいい。あんな大蛇は生身の俺では無理だ。だからと言って変身して倒す気にもなれない。ここは俺も逃げようと思った。

 大蛇はしばらく追って来たが、俺たちの逃げ足の速さにあきらめたようだ。ペロは止まることなく走り続け、ようやく開けた場所で足を止めた。


(ここがこの階の最終地点みたいだな)


 偶然にもその場所に行きつけた。そこには数か所の通路がつながっている。俺はそこから何者かがこの場所に近づいているのを感じた。ここで最後の勝負をしようというのか・・・。

 するとゾンビの群れが出てきた。レベルは高くないようだが、数は多い。両手を前に出してよろめきながらゆっくりと接近してくる。変身しようかと思ったがここは我慢した。どうせこの階のボスキャラが現れるのだからそれからでも遅くない。


「ゆくぞ! ペロ!」


 俺はそう叫ぶと棍棒でゾンビの群れに飛び込んでいった。ゾンビ自体は緩慢な動きだから倒すのはそんなに難しくない。急所の頭を確実に潰すだけだ。ただし囲まれて身動きができなくならないようにしなければならない。

 ペロも次々にゾンビを倒していった。俺は自覚していなかったがその戦闘により俺のレベルも上がったようだ。道化師としてだが・・・。生身の体でも俺はそこそこ強くなった気分がした。


 そしてようやくゾンビをすべて倒すことができた。いよいよこの階のボスキャラが現れる。ペロが唸り声を上げて威嚇している。俺は荒くなった息を整えて待った。すると通路の奥から人影が現れた。どんな魔物が現れるのか・・・。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る