第64話 戦いは終わらず

 するとペロがうなずいて動いた。


「ギャン! ギャン!」


 と威嚇の声を上げて3人に向かっていったのだ。彼らは操られているからペロに対して手加減などしない。しかしペロはその小さな体を生かして素早く走り回って3人をかく乱している。


「今だ! トォーッ!」


 俺はジャンプしてキノコ怪人のそばに降り立った。キノコ怪人は慌てて「プーッ!」と胞子を吹きかけるが、そんなものは俺には効かない。さっと避けるとキックやパンチを叩きこんでいった。ペロが3人の相手をしているうちに急いで倒さねばならない。

 キノコ怪人は打撃を受けて後ろに下がった。かなりのダメージがあるようだ。


「行くぞ! トォーッ!」


 俺は大きくジャンプして空中で回転して必殺技を放った。


「ラインキック!」


 それはキノコ怪人の体を切り裂いて大きな穴をあけた。そこから胞子が散らばり、辺りにパッと広がった。そして摩擦力で火がついたのであった。俺が着地するときにはキノコ怪人の体は燃えていき、やがて灰になって風に飛ばされていった。


「やったか!」


 キノコ怪人を倒したが、俺の中では不完全燃焼だった。やはり怪人を倒したら爆発してくれなければ・・・。TVのラインマスクでも燃え落ちたり、ドロドロを溶けて消えたり、様々なバージョンがあったが、やはり爆発に勝るものはない。


「これで元の戻る・・・はずだが・・・」


 勇者ノブヒコたちは元に戻った様子はない。彼らはペロを追い回していた。


「やめろ!」


 俺は3人の元に駆けていった。すると彼らはまた俺を攻撃してきた。


「なぜだ! 怪人は倒したはずだ!」


 俺はつぶやいた。すると周囲から不気味な声が聞こえてきた。


「ふふふ。貴様は俺を倒したと思っているようだが、そいつは俺様の分身に過ぎない。キノコ怪人は胞子で無限に増えるのだ」

「なんだと!」


 俺は厄介な奴と戦うことになってしまった。だが倒す方法がないわけではない。奴は燃えやすい。だからこの辺り一帯に火をつけて燃やしてしまえば一網打尽だ。ヒーローの戦いとしては雑だがそれが一番手っ取り早い。

 だが敵もそのことは十分考えているようだ。


「この場所を燃やそうと考えているようだな。だがお前にできるかな?」

「なに!」

「ここには俺様がとらえた人間がいる。そいつらも死んでしまうぞ!」


 忘れていた・・・確かにそうだ。とらえられた人たちを助けに来たのだった。


「この地下にダンジョンがある。それを攻略すれば最下層に俺様の本体がいる。それを倒さぬ限りお前に勝ち目はない」


(ダンジョン? これまたRPGのようになってきたな。中の敵と戦いつつ、人々を助けてラスボスを倒すということか・・・)


 否応でも俺はダンジョンを攻略しなければならない状況シチュエーションに追い込まれた。


「それから言っておく。お前の仲間の3人は俺のカビを植え付けられている。あと3日もすれば体は腐りだす。もう助けられんぞ」


 キノコ怪人はハードルを上げてくる。その3人は戦いを止めて少し離れたところで整列している。


「ふふふ。待っているぞ! このダンジョンがお前の墓場だ!」


 奴の言葉が途切れると、周囲が煙に包まれて視界を奪った。


「待て!」


 俺は叫ぶが、もちろん待つはずがない。煙が消えていくと勇者ノブヒコたちの姿も消えていた。


「やはりダンジョンを攻略しなければならないか・・・」


 俺はつぶやいた。だが俺はダンジョンという物をよく知らない。魔物やらが襲ってきて、宝物が隠されているといったことを聞いたことはある。しかしキノコ怪人も不親切な奴だ。ダンジョンにおびき寄せようとするならその入り口を指し示してくれたらいいのに、奴はそれについては何も言わずに消えていった。


「まあ、いい。きっとダンジョンを攻略して仲間やとらえられた人たちを助け出す!」


 俺は右手の拳をぐっと握りしめた。

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