第63話 3対1

「うわっ!」


 3人は声を上げた。その顔全体に白いパウダー様のものがこびりついている。それはまるでクリームパイを顔に受けたみたいだ。だが笑い事では済まされない。彼らにどんな作用が出るのか・・・。


「何をした!」


 俺はキノコ怪人に問いかけた。


「ふふふ。俺の胞子を吹きかけた。これで3人は俺のしもべだ」


 どうもジョーカーという組織は人を操るのを得意としているようだ。これで何回目か・・・。それにしても人を操るために様々な手を考えるのには恐れ入る・・・などと感心している場合ではない。


「行け! ラインマスクを抹殺しろ!」


 キノコ怪人の命令に3人はゆっくりうなずき、無表情の白い顔をして俺の方に向かってきた。もう完全に奴に操られている。


「やめろ! 正気に戻るんだ!」


 などと言ったところで聞くわけがない。勇者ノブヒコが剣を振り回してきた。操られているからと言ってもその鋭さは変わらない。俺は何とか避けて後ろに下がった。そこにミキが魔法棒で「サンダーショット!」と何発も電撃を放ってくる。それを腕で払うと激しい痛みとともに腕がしびれて動きにくくなる。その隙を逃すまいとアリシアが華麗に舞いながら攻撃を仕掛けてきた。


(これはまずい・・・)


 一人一人でもかなり強いのに3人相手では手に余る。しかも俺は彼らを攻撃できない。このままでは味方の手によってやられてしまう。


「ラインマスクよ! どうもできまい。このまま味方の手にかかって死ぬのだ! ふふふ・・・」


 キノコ怪人は愉快そうに笑っていた。すでに勝利を確信したような自信満々の態度だ。


(なんとかしなければ・・・)


 俺は打開策を考えた。今までの経験、いやTVのラインマスクも怪人を倒せば操られた人が元に戻るというセオリーがある。


(勇者ノブヒコたちの攻撃のすきをついてキノコ怪人を倒す!)


 それが勝利への道筋だった。だが3人の攻撃は俺に行きつく暇さえ与えない。この危機を乗り切る方法はあるのか・・・。

 するとその辺りを走り回っていたペロが戻ってきた。彼(?)だけが俺の味方だ。ペロは尻尾を振ってアリシアに甘えに行ったが、いつもと違う様子に気付いたようだ。さすがは犬、いやウルフだけのことはある。ペロは3人と戦っている俺を不思議そうに見ていた。


「そうだ! ペロ! 勇者ノブヒコもミキも、そしてアリシアも敵に操られている。俺は怪人をやっつけるから3人の相手をしていてくれ!」


 俺はペロに言った。こんなことを犬、いやウルフに言っても普通は通じないように思うのだが、そこはラインマスクだ。その意思は純粋な動物には通じるという設定になっている。TVのラインマスクもそうだった。それを見てなんとうらやましく思ったものか・・・そんなことはどうでもいい。俺はペロの目を見て訴え続けた。

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