第62話 キノコ怪人
それはスレーバーだった。
「やはりジョーカーか!」
俺は身構えた。すると周囲からスレーバーが出てきた。俺たちはすでに包囲されていたのだ。
「この事件はやはりジョーカーが絡んでいるようだ」
「ああ、そのようだな」
勇者ノブヒコは剣を抜いていた。その後ろでアリシアは短剣と扇を構えており、ミキは魔法棒を構えて戦いに備えていた。一方、ペロは・・・ただその辺りを走り回っているだけだった。久しぶりの森でうれしかったようだ。
スレーバーは俺たちを取り囲み、「ウィース!」と声を上げると一斉に襲い掛かってきた。こんな奴なら変身しなくても叩きのめせる。勇者ノブヒコもアリシアもミキもそうだった。スレーバーたちは次々に倒されていった。
(怪人がいるはず。まだ油断できない)
俺は辺りをうかがった。すると少し離れた地面が盛り上がり、やがてそれが割れて顔が現れた。そして奴はパッと飛びあがって俺たちの前にその姿をさらした。
(こいつ・・・なんだ?)
全身カビとキノコで覆われている。妙なにおいも放っている。怪人というよりおかしなコスプレをしている変質者というところか・・・。
「俺はジョーカーの改造人間。キノコ怪人だ!」
奴はそう名乗った。キノコをモチーフにした怪人はTVのラインマスクにも出てきた。多分、胞子を武器にするのだろう。直接攻撃か、菌を植え付けてゆっくりダメージを与えるのか・・・見た目以上に危険かもしれない。俺は変身することにした。
「ラインマスク! 変身! トォーッ!」
ジャンプして空中で変身して華麗に着地した。
「天が知る。地が知る。人が知る。俺は正義の仮面。ラインマスク参上!」
俺が名乗りを上げるのを待って、奴は襲い掛かってきた。そんな恰好でも最低限のマナーは心得ているようだ。弱そうに思うが、何か罠か仕掛けがあるようでうかつに接近できない。距離を取ってキックを放つが奴の体に触れるとパッと煙のような胞子が飛び散る。
(この胞子に何かありそうだ)
普通、カビ系の怪人は胞子が猛毒だったり、爆発したり、何らかの効果を持つことが多い・・・TVのラインマスクではそうだった。さてこいつのは・・・そう考えて俺は慎重だった。
だが勇者ノブヒコたちは違った。いつもと違って距離を取って戦う俺が歯がゆかったのだろうか、それともスレーバーをすべて倒してしまって手持ち無沙汰だったのか、彼らもキノコ怪人と戦おうとこっちに近寄ってきた。
「助太刀するぞ!」
「いや、いい」
勇者ノブヒコの申し出を俺は断ったが、彼は退こうとしない。それにミキやアリシアも言い出した。
「ジョーカーの怪人なんて簡単よ!」
「私たちにも任せてよ!」
2人とも甘く見ているようだ。さらに悪いことにキノコ怪人が挑発した。
「ふふふ。まとめてかかって来い! お前たちなど俺にはかなわないだろう!」
すると勇者ノブヒコをはじめ、ミキもアリシアもカチンと来たようだ。
「なんだと!」
「バカにしないで!」
「私たちの力を見るといいわ!」
3人がキノコ怪人に向かって言った。勇者ノブヒコが剣を振るい、ミキが魔法で「サンダーショット」の電撃を放つ。そしてアリシアが短剣や扇で踊るように打撃を与えようとする・・・その攻撃をキノコ怪人はスルリとかわし、接近したところで3人のそれぞれの顔に口から煙のような胞子を吹きかけた。
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