第61話 北の森

 パーティーの登録が済んだのでいよいよ仕事を受けることになった。それは冒険者ギルドの壁に張り出している。勇者ノブヒコが見つけ出してきた依頼だ。


『北の森の行方不明者の調査。見つけ出した人数に応じて賞金が加算される』


 それを受けるにはその壁から依頼書をはがして持っていくだけでいい。もっともそれは1枚だけではない。数枚が張られているし、はがされた跡もある。俺たちよりも先に依頼を受けて北の森に行ったパーティーがいると聞いていたが、そのはがされた跡は5,6か所はある。その数のパーティーがそこで消えているのだ。


(勇者ノブヒコが言ったとおりだ。仕事をしくじっても消えることはない。これはおかしい)


 俺の疑念は深まった。やはりジョーカーが関わっているのか・・・。

 勇者ノブヒコが依頼書をはがして懐に入れた。そして大きく声を上げた。


「我がパーティーが依頼を受けた。みんな、行くぞ!」

「おう!」


 俺やミキ、アリシアは拳を突き上げて応じた。ペロも一人前に右前足を上げている。我がパーティー『勇者とゆかいな仲間たち』の活動開始である。


 俺たちは早速現場に行ってみることになった。俺はホバーバイクだが、他の3人と1匹はどうやって行くのか? 徒歩か、やはり馬みたいな動物に乗るのか・・・と思って見ていた。するとアリシアがバギーのようなホバーカーを回してきた。これに乗って行くのだそうだ。RPGのパーティーらしくはないが、それは仕方がない。この異世界でも便利なものの方がいいのだ。


 北の森は不気味なほど静まり返っていた。ここには貴重な植物やキノコがあるのだが、失踪騒ぎがあってから人が寄り付かなくなってしまっていた。しばらくそこいらを走っていたが、おかしなところも不審な場所も見つからない。

 俺たちは開けた場所で一旦、ホバーカーとホバーバイクを停めた。アリシアが辺りを見渡しながら言った。


「不気味なだけで何もないわね」

「そうね。嫌なところね」


 ミキは不安げにうなずいていた。ペロだけは喜んでその辺りを走り回っている。


「何か手がかりが見つかればいいが・・・。これは難しそうだ」


 勇者ノブヒコは腕組みをして考えている。だが俺は周囲にかすかな気配を感じていた。何者かが監視している。向こうに見える木の陰には人影がちらっと見えた。俺は何気なくミキに近づいて耳打ちした。


「向こうの木に誰かがいる。サンダーで追い出してくれ」

「ええ、わかったわ」


 ミキは密かに魔法棒を取り出して、


「サンダー!」


 を発動して向こうの木のそばに雷を落とした。すると慌てていくつかの人影が飛び出してきた。


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