第47話 北門襲撃

 ある日、ペロの散歩から帰ってくると、ミキがあわててアキバレーシングに飛び込んできた。


「大変よ! すぐ来て!」

「どうしたんだ。そんなに慌て」

「魔獣が襲ってきたの。今、門の前で警備兵が戦っているの」

「わかった! すぐ行く!」


 俺はミキとともに店を出て行った。


 このライムの町は森の中にある。魔獣の侵入を防ぐために周囲を結界の効果もある高い塀を巡らし、南北に大きな門を構えて警備の兵を置いている。襲われているのは北門だ。

 そこに向かう途中、俺はミキから話を聞いた。魔獣が町を襲うことなどめったにないとのことだ。あっても、群れからはぐれて迷い込んだ魔獣が門の近くで人の姿を見て襲ってくる程度だ。普通は結界があるため町には恐れて近づかないようだ。それが今回のように群れで襲ってくることなど考えられない・・・ミキはそう話していた。


「こんなことをするのはジョーカーか!」

「まだわからないわ。私も勇者ノブヒコから通信を受け取っただけだから」


 パーティーの仲間同士はつながっており、簡単に魔法で通信ができるらしい・・・いや、俺だってパーティーの一員だ。


(リーダーの勇者ノブヒコが俺だけ通信できなくしたな。もちろん狙いは・・・)


 俺はまるでLINEを仲間外れにされた気分だった。だがそんなことはどうでもいい。門を突破されれば魔獣が人々に襲い掛かる。そうなればどれほどの被害が出るか、わからない。


 北門では大騒動になっていた。門は固く閉められているがその向こうで叫び声が聞こえる。


「助けてくれ!」「門を開けてくれ!」


 魔獣の侵入を恐れて、外にまだ人がいるのに閉めてしまったらしい。俺は警備兵の一人に聞いた。


「助けないのですか?」

「仕方がない。ここで開けたら町が大惨事になる」


 確かにそうだ。しかしあの悲鳴を聞いてヒーローとして何もしないわけにはいかない。


「俺が助けに行きます。外に出る方法はないですか?」

「小さいくぐり戸を通れば、人一人くらい外に出られるが・・・。だが危険だ。殺されに行くようなものだ」

「大丈夫です。勇者ノブヒコのパーティーの一員ですから」

「そうか! あの勇者の! それではあちらから・・・」


 勇者ノブヒコの名前は絶大だ。この町に来て間もないが、いろいろとミッションを行って名を挙げているのだろう。ラインマスクも負けぬように活躍しなければならない。


 俺はミキとともに北門の狭いくぐり戸を開けて外に出た。これほどの小ささなら魔獣は入ってこられないだろう。いや、このくぐり戸で門の外に取り残された人たちを助けられたのでは・・・と疑問に思う。

 だが後から聞いたことだが、そのくぐり戸は外には出られても中に入れないようになっているそうだ。やはり外に出て助けに行かねばならない。

 そこはすでに血の匂いが漂っていた。かなりの人がやられたのかもしれない。

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