第25話 空飛ぶ敵

 コウモリ怪人は接近すると、両手の爪で引っ掻いてきた。だがそんな貧弱な爪ではたいしたことはない。俺は変身しないままで蹴り飛ばした。こいつの戦闘力はたいしたことはない。すると奴は狭い廊下を背中の翼を広げて飛んできた。俺はさっと避けたが、奴は俺を、いや俺の服をしっかりと爪で引っ掛けやがった。そして窓を突き破って空に舞い上がった。


「ここから落ちて死ね!」


 コウモリ男の狙いはそこだった。奴は上空高く飛んでいきなり俺を放した。俺は真っ逆さまに落下しながらも内心では心躍っていた。空中で変身することなどそうあることではないと・・・。TVのラインマスクでも数回しかないだろう。俺は空中で姿勢を制御しながら変身ポーズを決めた。


「ラインマスク! 変身! トォーッ!」 


 どういう力が働いているのかはわからないが、この時は地上に着かなくても空中でジャンプできるのである。そして大きく一ひねりして地上に降りるとラインマスクへの変身が完了していた。

 空中で旋回して見ていたコウモリ怪人はかなり驚いていて、「お前は誰だ!」とも言おうとしない。仕方がないのでこちらから名乗ってやった。驚くがいい。この俺がラインマスクだったことを・・・。


「天が知る。地が知る。人が知る。俺は正義の仮面、ラインマスク参上!」

「うぬぬぬ・・・。あの高いところから落ちて無事でいられるとは・・・」


(そっちかい!)とツッコミを入れそうになったが、何とか我慢した。とにかく奴が驚いたのだからこれでよしとしよう。


「いくぞ!」

「空を飛べぬお前に何ができる! 俺が切り刻んでやる!」


 コウモリ怪人は滑空して、両手の鋭い爪をきらめかせて俺に襲い掛かってきた。これこそが奴の本領発揮というものだろう。強力かつ厄介な攻撃手段だ。そのスピードは速く、俺は避けるので精一杯、奴のなすがままにされている。

 ラインマスクの危機だ・・・という風に見せている。そうしないと戦いの緊迫感は生まれない。簡単に奴を捕まえて地上に引きずり下ろしてはいけないのである。

 奴は俺が手も足も出ないと思って何度も空から攻撃を仕掛けてきた。そのうちの1,2回は攻撃がヒットして、俺は奴にひっかかれて、体から火花が飛んだ。


「どうにもなるまい!」


 コウモリ怪人は上空から勝ち誇って言う。いい気なものだ。確かに空を飛ぶ怪人には手が届かない。ラインマスクが空を飛べたら・・・いやいや、そんな設定にはできない。もし空が飛べたらバイクなどに乗らず、飛び回っているだろう。それではスーパーマンになってしまう・・・。

 しかし飛べなくても戦う方法がある。これはTVのラインマスクが空飛ぶ敵と戦った方法だ。素晴らしく感動した思いが今でも残っている。これを試してみなければなるまい。

 俺は心の中で念じた。


(来い!)

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