第24話 救出

「ソウタ! しっかりして!」


 俺は声をかけられて目を開けた。目の前にはミキがいた。俺は体を縛られて暗い部屋に閉じ込められていた。そこに俺を助けようとミキが忍び込んできたのである。彼女は魔法使いだからそんなことは朝飯前だ・・・と俺は思っていた。


「ミキ・・・か。」

「今、縄を解くわ」


 ミキは棒を俺に向けて魔法を唱えた。すると縄はするりと解けた。


「大丈夫?」

「ああ、大丈夫だ。ありがとう。やはり君が助けに来てくれたんだね」


 そう言うとミキは頬を赤らめてそっぽを向いた。


「別に助けに来たわけじゃないのよ! ジロウや他の人のことが気になっていただけよ!」


 相変わらずのツンデレだった。俺は苦笑しながら咬まれた首や腕をさすった。もう傷は消えている。改造人間の回復は常人より遥かに速い・・・という設定なのだ。それに俺を操ろうとして牙から注ぎ込んだ毒・・・浄化してしまう俺には効かないことになっている。それは俺に埋め込まれた魔法増幅装置によって、俺の考えるがままなのだ。だがやられた振りをして、倒れたままじっとしているのは少々つらい。さてこの次、どういう展開にしていくか・・・。


「それより操られている人を治す方法はあるのか?」


 そのためにミキを逃して方法を考えてもらったのだ。もし簡単に怪人を倒して治す方法がなくなってしまったら大変だからだ。ミキはツンデレを止めて、真剣な顔をして俺の方に向いた。


「それは難しいわ。怪人の魔法の毒で操られているみたいなの。でもあの怪人を倒せば魔法が消えて元に戻るかも」


 そうなるとあとは奴を倒すだけだ。ヒーローらしい話になっていた。しかしあの青い顔をした人たちに囲まれずにどうやって戦うか・・・前回は盛り上げるためにわざと捕まったが、何度もそんなことをしていられない。


「怪人は俺が倒す。だがあの人たちをどうやって・・・」

「それなら任せておいて。考えてみたらただぼうっと歩いている人だもの。魔法をかけて動けなくしたら問題ないわ」


(なるほど)俺は心の中でうなずいた。魔法は便利だ。どんな状況でも切り抜けられる。だがヒーローが活躍できる程度にしなければ盛り上がらない。


「よし。それなら俺がこの部屋を音を立てて出る。するとあの人たちが追ってくるだろう。ミキはあの人たちを動けないようにしてくれ。そうすれば怪人が出てくる。」

「わかったわ! OKよ!」

「よし! いくぞ!」


 俺は勢いよくその部屋を飛び出した。すると廊下にいた青い顔の人たちがゾロソロと向かってきた。いや、そればかりではない。部屋からも人が出てきた。そこをすかさずミキが魔法をかけた。


「・・・イモビラス・・・」


 するとピタッと青い顔の人たちの動きが止まった。そこにコウモリ怪人が出てきた。自由になった俺と動かなくなった青い顔の人たちを見て、驚きの表情を見せた。


「貴様! どうやって!」

「ふふふ。お前の毒など俺には効かん!」

「なんだと! ならばこの俺が直接抹殺してやる!」


 望むところだ・・・俺は身構えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る