第23話 青い顔の男
「うわっ!」と声を上げそうになるのを必死にこらえていると、その部屋から人が出てくるのが見えた。真っ青な顔にうつろな目、半分開けた口からよだれを垂らしている。両手を胸の前で開いて構え、よろよろと歩いている。
(幽霊だ!)
俺はパニックになった。いくらラインマスクでも幽霊と戦ったことはない。どうしたらいいか・・・俺は必死に考えた。
(そうだ! お経を唱えたら幽霊が逃げて行ったと子供の頃に見たテレビでやっていた!)
俺はとっさに浮かんだ考えを実行しようとした。
「ナムアミダブツ・・・ナンミョウホーレンゲキョウ・・・アノクタラサンミャクサンボーダイ・・・」
知っている限りの「お経」を唱えた。だが効果はない。横を見るとミキは魔法の杖を構えていた。
「何なの! そばに来ると吹っ飛ばすからね!」
さすがにミキは強い。幽霊でも怖がらない。するとあちこちの部屋のドアが開き、青い顔の男たちがたくさん現れた。俺たちは前も後ろもふさがれて逃げ場がなくなった。そしてその男たちの中にジロウがいた。彼もうつろな目をしてぼうっと立っている。
「ジロウ! しっかりしろ!」
俺が声をかけるが、彼はそのままだった。そしてまた一つ、奥のドアがバタンと開いた。
「もう逃げられんぞ!」
そこから恐ろしい顔をした怪人が出てきた。鋭い牙を生やし、腕には翼がついている。こいつはコウモリ怪人・・・すぐにわかった。
「俺の牙やこいつらの牙の毒が体に入れば、もう意思を持たない状態になる。お前たちも咬まれて俺の奴隷になるのだ!」
青い顔の人たちがガッと大きく口を開けた。そこには鋭い牙が生えていた。これですべてがわかった。この人たちは幽霊ではない。コウモリ怪人か、この顔の青い人たちに咬まれれば同じような状態になるのだ・・・これはラインマスクのテレビシリーズのエピソードにもあった。そうと分かれば怖いことはない。俺は急に元気を取り戻した。
「出たな! ジョーカー! お前たちの思い通りにはさせんぞ!」
「ふふふ。威勢だけは誉めてやろう! だがお前のような人間がかなうと思っているのか! やれ!」
コウモリ怪人が命令すると、青い顔の人たちが向かってきた。奴は俺がラインマスクだとは思っていない。俺が変身すれば・・・しかし・・・。
(叩きのめすのは簡単だ。だが俺はヒーローだ。操られているとはいえ、この人たちに手を上げるわけにはいかない・・・)
それはお決まりでもあるのだ。俺は背後にいた人たちを傷つけない程度に押しのけていった。
「逃げろ! ミキ!」
「でも・・ソウタが・・・」
「俺のことはいいから・・・この人たちを治す方法を探すんだ!」
俺はミキを何とか逃がした。後は俺が罠にはまるだけだ。何もしなければ周囲から青い顔の人たちが寄ってきて身動きが取れなくなる。コウモリ怪人は不気味に笑っていた。
「フフフ。どうにもなるまい! 牙で咬まれて俺のしもべとなるのだ!」
「なにを!」
俺はあがいて見せた。軽くだが・・・。そのうちに青い顔をした人たちに押さえつけられて、俺は本当に動けなくなった。コウモリ怪人は勝ち誇ったように言った。
「これでお前は終わりだ!」
「くそ!」
俺は悔しがって見せた。青い顔をした人たちはその牙を俺の首や腕に突き立てていく。
「うわー!」
俺は叫び声を上げて、その場に倒れた。その上からコウモリ怪人の声が聞こえてくる。
「この男はこれで我がしもべになった。完全になるまで縛って、向こうの部屋に叩きこんでおけ!」
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