第22話 洋館
ホバーバイクに乗って俺とミキはその場所に向かった。町を出てしばらく行ったところにある、鬱蒼とした木々に囲まれた古い洋館、それが幽霊屋敷、いや「ハイグレータウン」だ。
「さあ、着いたわ!」
ミキはいきなり玄関に向かおうとする。俺は彼女の腕をつかんでそれを制止する。ミキは不思議そうな顔をして俺を見るが、俺は首を横に振って「慎重に」と目で合図を送る。知らない建物に入る時は慎重に・・・相川良がいつもするようにやらねばならない。
周囲を見渡し、怪しい気配を感じ取り、建物の窓を見て何者かがこちらをうかがっているのを気づかないふりをして目に留める・・・それが鉄則だ。だが静かで小鳥のさえずりしか聞こえない。周囲は昼間で明るく、怪しい気配どころかのどかな感じさえする。もちろん窓からこちらをうかがう影もない。
「どうしたの? ははぁ~ん。ソウタ。怖いのね。いいわ。私が先に行ってあげる」
見抜かれていた・・・いや、しかし助かった。前世でお化け屋敷だけは子供のころから近寄らなかった。いきなりこんなモノホンではハードルが高すぎる。
ミキはそんな俺にかまうことなく玄関の扉を激しくノックした。
「すいませーん!」
だが何度しても返事がない。俺ならここであきらめてしまうのだが、ミキはいきなり扉を開けた。不用心にもカギがかかっていなかったのだ。
「すいませーん! 誰かいませんか! 上がらせてもらいますよ!」
やはり返事はない。ミキは構わずにズカズカト中に入っていった。俺は気が進まなかった。中に何かの気配を感じていたからだ。
(幽霊だったらどうしよう・・・)
そんな不安が俺の中にあった。だがこんなところで一人でいる方が怖い。俺はそのまま彼女の後をついていった。
1階は広間とキッチンとダイニングルーム、大きなリビングといったところだ。室内は薄暗く、静まり返って不気味だった。壁には人の顔のような変な形のシミが浮かび上がっている。さすがのミキも慎重に辺りを見渡しながら歩いて行った。俺の方は・・・情けないかな、ミキの後ろを離れず歩いていた。まるで遊園地のお化け屋敷を怖がるギャルのように・・・。
「ちょっと、押さないでよ!」
ミキにたびたび注意されるが、俺はそれどころではない。
幸いなことに1階では誰にも出会わなかった。だが俺の心臓のバクバクはかなりのものになっていた。改造人間といえどもこれではたまらない。
「おい。もう帰ろう・・・」
「なに言ってるのよ! まだ誰にも会っていないのよ!」
ミキは階段を上っていった。2階の廊下を歩くとギシギシと嫌な音がした。そのわきには小さな部屋がいくつもある。今にも開いて何かが出てきそうだ・・・。すると、
「バタン!」
と少し先の部屋のドアが開いた。
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