同級生の元彼がヤバイんだが?

ドラ✖️3

第1話

 ここは、桜丘小学校。沢山の子供達が青春の始まりを歩いている。今日も、彼等は少し可笑しな事件を巻き起こす。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 僕は、斉藤 光輝。小学3年生だ。バスケットボールのクラブチームに所属していて、少し前まで好きなものはバスケットボールだけだった。でも、一月前にクラスの吉川さんのことが好きになってしまった。重たい前髪が上がったところをたまたま見て、一目惚れしたんだ。絶対仲良くなって告白するぜ。


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 朝、それは1日の始まり。ここから気合を入れないと、吉川さんと仲良くなれる未来はないと思う。…うん。話しかけよう!最初は挨拶、次にランドセルのキーホルダーとか服装とか、何か目につくところを褒めて、関心がある感じで話して…よし。多分これで今日の放課後は吉川さんと買い物デートをしているはず。えっと、教室の僕の席は黒板側・廊下側の端で、吉川さんの席は教室の真ん中辺り。くぅ。遠い。席が隣なら自然に挨拶できるし、タイミングも測れるのに。こうなったら、2ヶ月前に安全ピンを借りた佐藤に安全ピンを返すついでに挨拶をして、佐藤の席から帰るタイミングで横を通った吉川さんにたまたま挨拶をしよう。さぁ、教室に入るぞ!!真ん中に吉川さんは…いない!?そんなバカな…orz いや。絶対にいるはず…居た!窓側の後ろの席!通称主人公席!あそこは高身長、裏番長、クラス委員長!三つの長の称号を持つトリプルリーダー佐々木さんの席⁉︎佐々木さんと吉川さんが話をしている。遠い…遠いぞ。彼女はクラスのカーストで言えば一軍!二軍の俺とは言え女子との絡みは少ない方な俺が一軍の女子がいるタイミングで吉川さんに話しかけるのはリスクが大きい!それに物理的にも僕の席から最も遠い。くそ、どうする?大きく回って誤魔化すか?しかし、少し不自然に感じるクラスメイトがいるかもしれない。そうだ!こんな時こそ、バスケットボールで培った、シュッとしたフットワークとゲーム全体を見通す広い視野を活かす時だ。ガードが緩まったタイミングで移動、ゴール前では冷静に、鮮やかに、確実にシュート《あいさつ》だ!!


シュタタタター(ランドセル、帽子を机に置く。)

シュシュタッタター(安全ピンを持って、佐藤の席まで行く。)

「サトゥコレッカエスワー(佐藤、これ返すわ。)」

シュタッシュタッタター(佐々木さんの席に辿り着く。)


「スゥ…おはy『キーーンコーーンカーーンコーーン』…」


「あ、チャイム鳴ったね。じゃあ佐々木さん。また話そうねー。」


「…(僕も席戻ろう。)」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


吉川さんに話しかけるのは失敗したが、僕の計画はまだまだ修正が効く。担任の先生の話を聞き流しながら僕はじっくりと計画を練った。


「完璧だ!」


「何が完璧なのかな?斉藤くん?」


「え?あ、」


「もう。先生の話を聞きなさい。もう一度だけ説明するけど、席替えをするから前の紙に書かれた通りに机を動かしてね。」


「あ、ありがとうございます。すみません。」


焦ったー。でも、計画の漏洩は防げたぜ。新天地で、切り替えて吉川攻略作戦を発動するタイミングを探ろう!


「じゃあ、これから3ヶ月一緒に過ごす周りのお友達に挨拶しましょうねー。」


「「「よろしくねー。」」」


「ヨ、ヨロシクオネガイシマッヒュ。」


「うん、よろしくね。」


キターーーー!!隣の席吉川さん!僕by吉川!ナイステゥーミーチュー!ナイストミーチューテゥー!いええええええ!総員(1人)作戦開始!


さぁ、神は言っている「攻めろ!斉藤!」と。


「目の悪い子、黒板の文字が見えない子はいるかな?」


「はい。今前から四列目ですけど三列目までじゃないと小さい文字は見えません。」


「じゃあ、悪いけど吉川さんの前の席の佐々木さんは席を入れ替えてくれる?」


「分かりました。」


「流石委員長。返事が良いわね。」


「ありがとうございます。」


嗚呼、神は死んだ。


「宜しくね、斉藤くん。」


「ウン。ヨロシク。」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


結論から言えば、この席は最高だろう。吉川さんと僕の席は近いし、4人組で班活動も一緒にする可能性が高い。いつでも話しかけられる距離感であり、休み時間も佐々木さんと話す為に席を移動しないパターンもある。そして、佐々木と席アドバンテージを活かして仲良くなれば、間接的に吉川さんと仲良くなるチャンスも増える。まさに「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ」という事だろう。本に小さな要求を重ねていくと次第に大きな要求も飲むようになる。助けてあげるほどに捨てられなくなる心情が増え、見捨てられにくくなると書いていた。という事で計画の序章プレリュードを始めよう。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「「ごめんね、佐々木さん(斉藤くん)。僕(私)算数の教科書忘れちゃって、見せてもらっても良いかな?」」


「「え?」」


まさか、佐々木さんが忘れているとは思わなかった。トリプルリーダーなのに忘れ物はするんだなあ。


「あ、ごめんごめん。僕、算数の教科書持ってた。じゃあ見せるから机合わせよう!」


「あ、そうなんだ。ありがとう!」


「あ、その問題写し間違えてるよ。教科書ちょっと遠い?もっと近づけようか?」


「えっあの、///チッチカ…///」


「え?何?聞こえなーいぞ。(顔を近づける)」


「ヤダッ///…もうッン」


予想以上に佐々木さん、チョロい。なんでだろう。休み時間にでも話を聞いてみよう。


「佐々木さん、なんか今日様子おかしくない?大丈夫?最近なんかあった?」


「いや、大丈夫。ほんと。うん。友達だからこそ、斉藤くんには言いづらくて。」


勝手に友達認定されてました。


「いや、確かに言いたくない気持ち、分かるけどさ。話した方が楽になると思うし、話してくれた方が僕も友達として嬉しいな。」


「えっと、ここじゃ恥ずかしいから、ちょっとこっち着いてきて。」


そう言って席を立つ佐々木さんの後ろを僕はついて行った。


「ここなら良いかな。」


そう言って3階と4階を繋ぐ角の階段に腰を下ろした佐々木さんは、ゆっくりと衝撃的な言葉を発した。


「私、元彼のことが忘れられないの。」


思った以上に事態は深刻だった。でも、僕がすぐ仲良くなれたのは時期が良かったんだろうな。ほら、弱っている女の子に「どしたん?話聞こか?」って近寄るやつ。


「私、彼と付き合う時にお試しだから1週間だけで良いから付き合ってって言って、付き合うことになったんだけど、他の子も彼が好きだ。欲しい。って言われちゃったらしくて、一週間経ったある日の放課後に、その新しい子の目の前で別れさせられて、私の目の前でその子は彼と付き合い始めたの。」


「え?彼ってそんなに人気なヤツなのか?」


「うん。彼のことが好きな子は5、6年生の上級クラスの子が多いんだけど3年生と付き合うのは私が初めてじゃなかったみたい。」


「それは相当人気なヤツだな。でも、この学校にそんな人気な奴がいたとは驚きだよ。」


「彼は学校の中でもベストスリーに入る人気っぷりで、女子だけじゃなくて男子にも人気だよ?」


「男子にも?それってどういうこと?付き合うわけじゃないよな?」


「え?付き合うよ?」


「マジ?付き合っちゃうの?男と?」


「でも男の子は彼をちょっと乱暴に扱うことが多いから大変みたい。この前なんて男子3人と同じ時期に関係を持ってて大事なところが大変だったらしいよ?」


「うわぁぁ。ヤバイなそれは。俺も気を付けよう。」


「うん。斉藤くんも付き合う時は乱暴はダメだよ?」


「そりゃ優しく扱うさ。本当に好きなら乱暴にしないだろう。」


「私もそう思う。斉藤くん、良い子だね。」


「うっうるせー///」


「ふふっ」


なんか思ってたより面白いし、優しいし、かわいいな。一軍女子だって身構えすぎてたかもな。


「あ、僕図書室に本返しに行くからそれじゃあね」


「へぇ。斉藤くん図書室に行くんだ。私も行こうかな。もしかしたら元彼いるかも知れないし。」


6年生を中心に男女問わず取っ替え引っ替えしている人気な佐々木の元彼とか気になりすぎるだろ。


「あ///」


「元彼居た?」


「うん、あの棚の所」


彼女が指を指した方向を見ると本を手に取って読んでいる6年生くらいのがっしりとした男がいた。


「へぇ、彼の良いところってどんなとこ?」


「先ず人気だしー、話はちょっと難しいことに感じることもあるけど分かりやすくしようとしていて、丁寧で優しい。気遣いを感じるなー。後、ドキドキさせられちゃう」


何故か、胸の奥がズキズキし、楽しそうな佐々木を見ているとむかついてきた。


「へぇ。でも、ああいうのって見た目だけというか、中身は薄っぺらいことばっかだったりしない?すぐ飽きると思うけどなー。」


「そんな事ないよ。ロマンチックだし、彼と過ごして、いっぱい大切なことも知って…彼が私をお、オトナニシテクレタシー///」


「ええ?早くない?一週間で最後までイっちゃったの?」


「そうだよ!ハイペースだったかも知れないけど、大切なのは時間じゃなくて気持ちなんだよー。」


「確かに言葉に深みがある。佐々木さんはもう、大人になったんだね。」


「でも、彼もう他の人に取られそうになってる。」


「え?マジかよ。人気すぎるな。」


「斉藤くん。お願いがあるの。彼と付き合ってくれない?」


「え!?こ、困るよ。だって僕は男の子なんだから、そういうのは合わないんじゃないかな?」


「好みなんて人生で変わることもある。勇気を出す時だよ。レッツチャレンジ!トライ!それでね、彼と付き合ったら、私ともシェアしてくれないかな?」


「え?何言ってるの?佐々木さん。し、シェア?もしかして僕も混ざっても良いの?どこまでイッていいの?」


「良いよ?彼と私と斉藤くんで、最後までイこ?」


「分かった!覚悟を決めたよ。」


「本当?嬉しい。だって彼、一度付き合ったら時間を置かないと付き合えないルールだからね。」


男として彼に負けた気がするけど、佐々木さんと付き合えるのなら良いかな。…ってダメだ!斉藤 光輝!!僕は吉川さんと付き合うんだ!だからやっぱりこの話は断るべきだ。


「ごめん。やっぱり僕は彼と付き合うことは出来ないよ。もう心に決めた人が居るんだ。」


「そんな、あっイヤァ」


佐々木さんは、先ほどの指を指した男子を見て狼狽えている。


「また取られちゃった。私の『モモ』」


「⁉︎⁉︎⁉︎」


「ちょっとちょっとちょっと待って。元彼の話してるんだよね?」


「うん。元彼紙」


「で、ももさん…?」


「うん。『モモ』(さん付け?)」


「えっちょっと混乱してきた。彼女をいっぱい作ったんだよね?そのもも?さんが。え?本名は?」


「ん?正式名称は『モモ』だよ?彼女?何言ってるの?」


「いやだから、君が付き合っていた男の話を今しているんだよ?ね?」


「いや、私男の子と付き合ったことないよ?」


「は??じゃあ元彼っていうのは?」


「ん?ちょっと確認なんだけど、借りた本の事をかのかみ略して彼紙かれしって呼ぶんだよね?」


「いや、呼ばないよ?何その誤字ったような間違い。可笑しいよ?」


「え?ちょっとまって。じゃあ本を借りることを付き合うっていうのも」


「可笑しいね。」 


「返却した本の事を元彼って言うのも」


「意味分かんない。」


「………うわあぁぁぁぁ。…多分、ネットで誤字を見て言葉を間違えて使ってたんだと思う。」


そんなことある?


「……」


「……」


「…フッ」


「ンンンンンンーーー」


「からかったのは悪かったけどさ、足を蹴るのは辞めてくれない?」


「シネ」


「うっ苦しいっ…バタッ」


「うわあ、急に倒れた!だ、大丈夫? 嘘、息してない。」


ほんとは倒れ込んだのは演技だし、ただ息止めてるだけなんだけどね。それにしても佐々木さんピュアでかわいいな。弄り甲斐がある。


「って嘘ー」


「なっ///〜っふんっ!斉藤くんの事なんかもう知らない!」


「ご、ごめん。悪かったから、どうにか機嫌なおしてよ。」


「やだ。」


「ごめんって」


「…なんで私にそんなに構うの?」


「そりゃ(吉川さんと仲良くなるためには)君と絶対仲良くなりたいんだ。僕の幸せな未来の為に、君が(吉川さんと仲が良いことを考慮して)僕には必要なんだ。」


「ふえ///…ンじゃあ私のこと、下の名前で呼んで?私も光輝くんって呼んでいい?」


名前呼びなんて友達としての距離が縮まった証拠だな!これは吉川さんと仲良くなるのに前進だ!


「もちろん、しおりちゃん。」


「さ お り!!もういい加減、本のイジりしないでよ。冗談だってわかるから注意で済ましてあげるけど女の子の名前を間違えて呼ぶとかあり得ないわよ!」


「ご、ごめんなさい。これからも宜しくね、さおりちゃん。」


あぶねー。素で間違えてたけど間違えた名前が正解に似ていたのとしおりと栞をかけていじったと勝手に勘違いしてくれたおかげで助かったー。

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