ゆめ

長沢朔太郎

第1話 帰ろう

 「ふぅー。」大きく息を吐いて会社のビルを出た。息を吐いたせいか沢山の息を吸った。居酒屋の焼き鳥風味の匂いが胃を刺激する。街では金曜日の雄叫びを上げる者が多々見受けられる。「はよ帰ろ。」小さな声でそう呟いた眉村は街を歩き出した。ここ最近東京では小さな地震が多い。今朝のニュースでは専門家が偉そうに解説していた。地震に汚職、猛暑日。そんな言葉がテレビを駆け巡っていた。東京のビルの灯りが、パソコン作業の多い眉村には暗すぎた。眉村は心に残る影に違和感を覚えながら歩いてゆく。酔っ払いには目もくれず帰路についた。

 細く暗い路の僅かな外灯に頼りながら鞄に手を入れる。財布やらハンカチ、昼飯のレシートがやたらと手に張り付いてくる。そのまま手を入れながらしばらく歩いた。暗い路にゴソゴソとした音が響き渡る。家に着いたのにも関わらずまだ見つからない。見つけたはいいが上手く穴に入らない。やっと家に入ったかとおもいきや身支度せずベッドに倒れ込む。不思議と枕が高いように感じた。明日は会社に行かなくても良いという想いが脳裏をチラつき、彼の頬は自然と緩んでいった。「明日はくそ寝てやろう。」一言ねずみに言い聞かせるような声を発したのち意識を失っていった。

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ゆめ 長沢朔太郎 @Nagasawa_S

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