第46話 未来と未来の為の戦争 14

先に動いたのは理玖とシャロンの相棒コンビであった。シャロンが法則、久遠を担当し、理玖は輪廻、闘志、憎悪を担当する。


「第四十二武装、簡易展開。タイプONE、刻塵ルゴ


シャロンは先程まで出現させていた銃とは別系統、近接戦用の武器、ナイフを出現させる。『箱』に収納している剣とは性能の格が違う。『箱』に収納している剣は愛用していた武器ではあるのだが、ナイフには負ける。


スキル『武装』で元々強かった武器に、一つ一つヘイランが手を加え、理玖とシャロンが魔力を流し込んだのだから。あの時の作業は単純作業が得意であるシャロンと言えども、辛いものがあった。けれども、その辛さが今活きているのであれば、良かったと言えるだろう。


久遠、法則の魔法が飛んでくる。その魔法を空中を蹴りながら進んでいき、魔力を纏ったナイフで切り裂く。切り裂かれた事に目の前の十二狂典は驚愕をしているようだが、そんな事関係無しに突き進む。再度、魔法が飛んでくる。


シャロンは質が高過ぎるのは切れないのだが、二人は量を選んだようだ。魔法としての質が高過ぎる物以外は切り裂く事が可能だ。例え、億にも及ぶ魔法の大群だったとしても、一気に切り裂く事が可能なのである。


ナイフを大きく振る事で、魔法が切り裂かれる。爆発を背景として、突き進む。想定外の事態に次ぐ想定外の事態。一人を倒したシャロンであれば、ある程度の強さを持っている事は想定していたが、此処までは想定外なのだ。


久遠はシャロンが持っているナイフに対抗する為、剣を召喚する。自身の異空間から出したようだが、このナイフに対抗するにはあまりにも無力。ヘイラン、理玖、シャロン。この三人が造った武器を甘く見過ぎであった。


剣とナイフ、其れ等が拮抗する事など無かった。神剣と言っても差し支え無い程の切れ味。久遠の剣がナイフによって切り裂かられる。久遠は驚きつつも、防御をする。否、防御をしようとした、の間違いである。魔力を巡らす前にナイフが腹に突き刺さる。


ナイフに纏っていた魔力を久遠の体内に発散させる。体内からの強烈な魔力の発散、例え十二狂典の一人だろうと、内部からの突然の攻撃は避けられない。瞳から、鼻から、口から血を噴き出す。激痛が久遠に襲いかかっているだろう。しかし、シャロンは収まるのを待たない。


「第四十二武装、第三十六武装、接着簡易展開」


先程集まっていた魔力よりも、更に強大な魔力がナイフに収束する。久遠は不味いと感じ、ナイフを抜こうとする。法則はシャロンに殴り掛かる。けれども、行動するには遅過ぎたのだ。久遠は早く抜こうとするべきだった。法則はもっと早く殴るべきだったのだ。


魔力が爆発する。ナイフを中心点とし、発動者のシャロンを巻き込んで爆発する。










金属音を鳴らしていた理玖は背後で二人の十二狂典消失を確認した。何とも早い仕事に感激しながら、魔力を高めてギアを上げる。今の状態が紅蓮状態と言えども、限界まで魔力を引き出していたのだ。限界以上の魔力、そんなのはダメージを負う事に他ならない。


口から血を吹き出しながら輪廻に進む。剣を構え、刺突のフォームをする。輪廻はその攻撃に輪廻の輪を構える事で防御するのだが、理玖も輪廻の力を剣に宿らす事で輪廻が押されていく。影から吸収した力なので、本体程は無い。その足りない分は地力で補い、優勢に持ち込む。


何秒間の衝突、破られたのは輪廻であった。輪廻の首に刺突をしようとするのだが、自身の方向に引き込む。間に合わないと感じたのだ。左右から向かって来る憎悪と闘志に阻まれると。だからダメージを与える方法を。三名にダメージを与えれる方法を。


理玖は剣を横に一文字で切る。空振っただけ。しかし、狙いは当たる事では無いのだ。空間を切り、輪廻、憎悪、闘志が居る三方向に斬撃を放射する。莫大な魔力を使用した物では無く、身体能力と超技巧で成した技。


(この高み、やっと到達できたよ。お祖父ちゃん)


武人としての高みの到達。それが理玖を一時的に力を開放する鍵となった。再度己の剣を振る。先程と同じく、超技巧で発生した斬撃。違う点があるとすれば、それは威力になってくる。それは制限時間があるとは言え、魔王として、種族としての格を上昇させたからだ。


理玖の一時的な力の開放。人間で言うゾーン状態にある事が大きい。今可能な魔王としての集中力、感覚を研ぎ澄ましているから此処までの変化が生じた。魔力を一部分、つま先に纏わせる。最低限の魔力量で、最大限の効果を引き出す。


行動一つ、憎悪に向かう。行動二つ、憎悪の両腕を斬り飛ばす。行動三つ、腹に剣を突き刺し、『理想郷ノ道エデン』でスキルごと浄化をする。行動四つ、近距離に居た輪廻の背後に回り、輪廻の力を使い、首に突き刺す。行動五つ、輪廻を蹴った後、爆発したのを確認してから闘志の前に行く。


行動六つ、魔法を発動する。


「月が止まる時、太陽は沈む。しかし、忘れる事なかれ、太陽は何時も監視している。貴様等の悪行もな」


神スラ恐ル太陽ノ憤怒イーファス・レートニング

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