第34話 未来と未来の為の戦争 2

最初に動き出したのはウィレオ。自身の得物であろうモーニングスターで宗介に殴り掛かってくる。それに対して宗介は、愛刀の『ろう』で対抗する。モーニングスターの攻撃に楼は折れる事など無く、拮抗している。


「こんな事、あり得るのォン!?私のモーニングスターと拮抗するなんて……」

「そりゃあ、俺の楼はやわじゃねえっすからね。他の刀剣と比べられても困るっすよ!」


宗介はウィレオのその言葉に、自慢気に口にした後、ウィレオのモーニングスターを押し切る。ウィレオはその事実に再び驚き、目を見開く。それを隙と捉え、首に刺突をしようとする。傷つける為では無い、殺す為の攻撃である。


しかしその攻撃を中断する事になってしまった。レオワルドが横から金棒を振るっていたからだ。刺突をしようとしていた楼を急速変換し、金棒を防ぐ。レオワルドの攻撃は重く、腕が折れそうだ、と錯覚する程のものだ。


金棒を弾き、斬撃を喰らわせようとするが、分厚い金棒で防がれる。衝突し合っている楼を一旦引き、再度楼を振おうとした。しかし、レオワルドに当たる事は叶わなかったのだ。それどころか、金棒にすら触れられていない。


横腹目掛けてウィレオのモーニングスターが当たったからだ。強烈な衝撃感、激大な痛みが宗介に襲いかかる。しかし、ただ吹き飛ばされるだけでは宗介は終わらない。空気を蹴り、周囲を乱す。人としては異常以外の何者でも無い宗介が平穏の環境を荒れ狂う環境に変化させた。


急速に移動を開始しながら宗介が得意としている影のスキルを空中に展開し、放射させる。瞬時に可能なまで鋭利にする。それだけでも十分武器にはなるのだが、あの二人の前では無力だ。ウィレオだけなら通るかもしれないが、レオワルドの前では塵へと化す。


「お前なぁ、無駄だって分かんねえのかぁ!?」

「分かってるっすよ。だから利用する!」

「……!?光坊!影は罠ヨォん!」

「はぁ!?」

「今更気付くなんて……遅過ぎるっす」


宗介の楼がレオワルドに袈裟斬りを喰らわせる。袈裟斬りに切った上半身から血が吹き出していく。宗介は追撃として喉に刺突を喰らわせようとしたのだが、金棒で防がれる。ならば、と愛刀を手から離し、金棒に拳を当てる。


金棒にある棘が宗介の拳に当たり、少量の痛みが襲うのだが、関係ないと言わんばかりに、拳で乱撃を喰らわせる。あまりの攻撃力に驚愕するというマイナス要素で拮抗する事ができなかったのだ。通常の状態であれば拮抗する事ができた筈なのに。金棒を壊す最後の一発として、先程よりも強く握り、魔力を多く込める。


その一撃は不発で終わる。


「流石に自由に動き過ぎヨォん!」


ウィレオのモーニングスターが宗介に刺さる。殴るのを中止し、頭上で腕クロスをし、魔力を纏った事で最悪のダメージは避けられた。けれどもダメージが強烈なのには変わらない。魔力を纏っているのにも関わらず、腕からはポタポタと血が流れてくる。


反抗しようと宗介が腕を動かそうとするが、それもまた不発になる。レオワルドが先程まで攻撃されていた金棒で宗介を攻撃する。腕を魔力に回していた事、腕を既に防御していた事。これ等が原因として宗介は攻撃を防ぐ事はできなかった。今まで喰らった攻撃の中で最も強烈なものを喰らう。


音速を遥かにに超える速さで吹き飛ばされる宗介は何とか反抗をしようと思うが、魔力が阻害されて動かない。体も麻痺しているかの様に、自分の意思では動かせない。激突するまで待つしか無い、そんな思考を巡らせていると、宗介の瞳の中にはウィレオが愛武器であるモーニングスターを振るおうとしている光景が目に入る。


先程の攻撃と同じく、宗介には防ぐ術など持ち合わせていなかった。腹に激突したモーニングスター。その攻撃に口から血を吐く。気絶しそうなダメージ量だが、刻王衆としての意地で意識を留める。


宗介は地面に叩き落とされ、地下へと落ちていく。魔力解放をした時に発生した亀裂、その亀裂が大穴を出現させたのだ。大穴に落ちながら自身のダメージを自覚する。たった三撃、三撃でこれ程のダメージを喰らった事に驚愕を隠せない。


しかし、膨大なダメージを喰らった事で魔力阻害、体への麻痺が治った。反撃をする為の一手、それを用意する。影のスキルを使用しながら、智拳印という手印を結ぶ。手印はスキルや魔法の効果を高める為に使用されるのだが、そのリスクが高過ぎるので中々使用はされない。


「けど、この影に溢れた世界なら!」


先程の戦闘で発動していた影とは比べ物にならない程の膨大な影が穴に落ちてくるウィレオとレオワルドに襲いかかる。どれだけ弾いても、光で消し去っても、再度再生して襲いかかってくる。そんな二人を観察していると、レオワルドがニヤリ、と笑みを深めた事を確認した。


何を、と疑問が頭の中を駆け巡る。レオワルドからは光が溢れてくる。この影の量は並大抵の光では抵抗できない。影を操れないレベルとなると、この大穴全ての影を光で消し去らなくてはならない。そんな事、あり得ない。もしそんな事が出来たとしても、出来るのは数秒だ。


それをしたら、レオワルドの魔力は底が尽きるだろう。


(いや、魔力を隠蔽しているのなら、どうなるっすか?)


もしかして、と考えられる可能性として一番最悪な可能性が浮かび上がってきた。魔力を隠蔽しているという最悪の選択が。もし魔力を隠蔽しているのならば、勝利という道が一気に狭まってくる。


「楽しめたぜぇ、これで終わりにしようなぁ」


光銀照陽ゼルガミール

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