第33話 未来と未来の為の戦争
「主殿、十二狂典が動き出した。既に破壊されている世界は万に届く」
「そうか、分かったよ。エイドル、リファエル、アルゼルドは部下達を十二狂典の配下に当ててくれ。元帥である君たちは十二狂典に。シャロン、フェナも同じくして十二狂典に。他の刻王衆は配下に。ヘイラン、君も頼む。僕は残った十二狂典を相手する!命を尽くして倒せ、とは言わない。僕が言える事は一つ。己を信じ、仲間を信じろ!」
『了解!』
「これで終わりかもしれねえっすからねえ。最後くらい、思いっきりカッコつけさせて貰うっすよ!」
『
自身が得意としている影を展開し、十二狂典の部下達を呑み込む。どんなに自身の才能に驕っても、性根が腐っても十二狂典の部下だ。適当に強さを磨いて、適当に生きている者よりも抵抗力が高い。しかしその程度で幹部に選ばれた訳では無い。刻王衆に選ばれる訳では無い。
泥沼の影は肥大化し、宗介が担当していた範囲の部下達は全て呑み込んだ。しかし安堵する事無く、周囲を捜索する。これだけでは終わらない、と勘が伝えていたからだ。それに加えて、宗介は先程から魔力を探知していた。理玖の魔瞳程の探知力は無いものの、魔力探知に関して、宗介は無名無法王冠で上澄みに位置する。
そんな宗介の魔力探知には魔力が反応していた。宗介は無名無法王冠の組織員全員の魔力の波長は把握している為、味方では無いだろう。強烈な魔力量、そして洗練された魔力の流れを感じるに長くの年を生きてきた者だ。その魔力には蒼月と似たような魔力が感じられた。これから見て、その対象は十二狂典の味方、つまり敵と受け取って良いだろう。
宗介がその魔力探知対象が居る方向に移動しようとするのだが、黒一色で染められた槍が宗介に飛んできた。あまり速度は無いので余裕を持って避けると、槍があった場所には人がおり、槍が無くなっていた。
「お前が影使いかぁ?ヒョロっヒョロだなぁ。影、体型、全てにおいて俺が勝っちまうと可哀想になってくるよなぁ」
「それは可哀想ヨォん、光坊。そんな負ける要素しか無いけれど、魔王の口の上手さに操られてしまっただけなんだらネェ」
好き勝手に言う筋肉の塊の男と、筋肉の塊男とまではいかなくとも、筋肉があり、女性物の化粧をしている男に怒りを抱きながらも、飛び出しはしない。感情的になりやすい宗介と言えども、実力差は理解している。宗介と同格な実力を持っている二人。一人ならばまだ真っ向勝負で何とかなったものの、二人は無理だ。
自分と同じ実力を持っている二人を相手に真っ向勝負するのは、死にたがりがする事だ。そして何よりも、筋肉塊男が一番厄介である。オカマが厄介では無いのか、と言われたらそうでは無いが、相性はそこまで最悪では無い。けれども筋肉塊男の相性は最悪と言っても良いくらいだ。
筋肉塊男、オカマはいつまで経っても来ない宗介に深く笑みをする。二人は攻撃的な意思を浮かべながら一直線に突っ込む。防御を取る為に影を展開するのだが、煌びやかな光を纏っている筋肉塊男の拳で影が破られる。防御を破った筋肉塊男に意識を向けていると、横腹に強烈な攻撃を喰らう。
その攻撃で筋肉塊男の意識が散る。意識が痛みに向いてしまう。意識が対象から離れたコンマ数秒、二人にとっては十分であった。オカマの一撃が宗介に刺さる。宗介は禄な受け身を取る事もできずに吹き飛び、大岩に直撃した。痛みで瞳が揺れる。しかし魔力の練りは決して止めない。止めてしまったら負けになるから。
「あらあらあら、殺すつもりで打ったんだけどネェ。タフさは光坊に匹敵するんじゃないかシラァ?」
「お前の感覚は、瞳は節穴かぁ?生きている年数は俺達に及ばないなぁ。だから即座に受け身を取れ無かったんだよなぁ。けど、才能は脅威なんだよなぁ。だから魔力を一瞬で防御に回す事ができ、俺達の攻撃を最小に抑えたんだよなぁ」
筋肉塊男に対しての警戒を底上げする。魔力の扱い方という理玖以上の技術を獲得している宗介にとって、魔力の扱い方が卓越しているのを理解されてしまうとやり難い事この上ない。タダでさえ、筋肉塊男とは相性が最悪なのに。
パワーもあり、スキルの属性相性は有利、頭もキレる。此処まで相性最悪なのは見た事が無い。感じた事も無い。その事実に泣き言を口から洩らしそうになるが、心の中に収める。瞳に敵意が生まれる。絶対に倒すという闘志が全身に宿る。此処で倒さなければ皆が死ぬ、という思考が巡る。
痛みを堪えながら立ち上がる。砂埃が服に付くが、手で叩いて振り払う。鋭い眼光でオカマと筋肉塊男を見据える。オカマはその闘志に、鋭い眼光に驚き、筋肉塊男は笑みを深める。宗介は理玖直伝の『箱』から白銀に光る刀剣を取り出す。
魔力のギアを一つ加速させる。宗介の魔力が地面に亀裂を生まれさせる。
「な!?あり得ないわヨォん!?あんな魔力探知出来なかったノニ!」
「言ったよなぁ、お前は節穴かってぇ。此奴を強者だって認めようぜぇ。俺は空白様の直属の配下、レオワルドだぁ」
「アタシは偏愛様の直属配下、ウィレオよ」
「俺は刻王衆の一人、影闇宗介っすよ」
両者が完全に、とは言わないがある程度を認めた事で自己紹介を終えた後、それぞれが攻撃の意思を見せる。
惑星ハルシェルネにて無名無法王冠の幹部一人VS十二狂典の最高幹部二人の戦闘が始まる。
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