第32話 決着

両者は炎を身体強化に回しながら体に纏う。理玖は熱気に、李克は冷気に晒されながら衝突し合う。


李克が首を狙って刺突をしようとする。己の剣で防御体勢を取る。そのおかげで首に剣をもらう事は防いだのだが、理玖は李克の行動を読み間違えた。少しの間戦っているだけだが、武道も、魔法も、卓越した技術を持っている。


理解するべきだったのだ、何故李克が防御しやすいら技で、速さで攻撃をしたのか。


李克の体に血が付着する。腹に異物が突き刺さっている感覚と激痛に襲われる。しかし動きを止める訳にはいかなかった。痛みは歯軋りをする事で我慢をする。


腹に突き刺さっている剣を抜かそうと、李克に向かって自身の剣を振る。その攻撃を避ける為に李克は剣を抜き、後退する。少しは今の不利的状況を何とかできた、と安堵の息を吐いたその直後に李克の白炎が直撃した。


凍てつく炎を全身に展開している為、焼却はされない。しかし、身を焦がすような熱、激痛がある事には変わりない。


白炎が治まり、理玖が空気に当たる。すぐには再生不可能なダメージ量に膝をつく。冷気というには、冷たさが足りない吐息を吐く。


「やはりな、先程から感じていた事だが、貴様はスタミナが圧倒的に足りない。炎は確かに脅威だが、スタミナが無いのでは、今の儂に勝つ事は不可能だ。さらばだ、高みを見せてくれた魔王よ」

「いいや、まだ終わらない。スタミナが無い?だったら作れば良い」


戦闘中に造った札を取り出す。理玖は並列で物事を行うのが得意では無い。並列行動に慣れる為に行った事なのだが、もう少しで生を失いそうになっていた。慣れない事は実践であまり使うとんじゃないな、と心の中で呟きながら札を口の中に入れ、ムシャムシャと食す。


造りだした紙と言えども、味は紙、食感も紙。美味しい訳が無い。顔を歪めるも、しっかりと体内に取り込んだ。


飲み込んだ後、理玖は故意に魔力を活性化させて札を溶かす。数秒後、札を溶かした効果が早速出たらしく、黄金の光に包まれる。発生する魔力を体内に収束、圧縮をするのだが、それでも体外に放出してしまう。魔力操作技術が甘いからだろう。


まだまだ、と自分の操作技術の低さに反省をしながら、放出した魔力を再度自身の体内に取り込む。そんな放出→吸収→収縮、圧縮を繰り返していると、変化はいきなり終わりを迎える。黄金の光が理玖の体にピッタリ張り付いて……爆発した。


結界の範囲は地球のユーラシア大陸に並ぶ。そんな膨大な結界範囲内全てを爆発で覆い尽くす。結界内の自然は、命は壊滅する。結界には割れ目が入る。バキバキという音を立てながら割れ目が大きくなっていく。爆発の威力な止まる事を知らない。むしろ大きくなっている。


結界の割れ目が完全に行き渡り、崩壊する。爆発は欲しい全体を包み込み、破壊していく。


星の寿命は、まだ遠い。超新星も、まだ遠い。しかし、星の崩壊の時間は近い。人が数えれる程には。星が爆発するまでの時間、推定30秒。


「ねえ、李克。君は宇宙空間に放り出されたら死ぬのかな?」


理玖がそう口に出すと、理玖と李克が戦っていた地の星は爆散した。











「生命体反応、随分と薄くなっている。追う価値も無さそうかな?」


宇宙に放り出された李克の様子を魔瞳で確認した後にそんな事を口にする。李克は魔力をもう禄に練れていない。宇宙で窒息死をしない為に魔力を展開しているのだが、もう魔力切れになるギリギリだった。このまま放っておいても、大丈夫であろう。体力も魔力もギリギリな李克と比べて、今の理玖は魔力も体力も万全に近い。


戦っても完全に理玖が勝つ。そんな考えに至った為、李克を見逃す、という判断をした。戦闘が終わって本拠地である星に帰ろうとして、前を見ると、驚愕な事実に冷や汗が流れる。理玖の瞳に映る範囲には月があり、その月は蒼く光っていた。太陽に照らされて、というのでは無い。


月が恒星のように己で光っていた。魔瞳の情報では月の内部に装置が付けられ、莫大な魔力を発していた。月目指して手を翳し、魔法を展開して放射する直前まで持っていく。しかし放射する前に魔法展開を閉じ、放射するのを中止した。今此処で月を破壊したら地球にも、無名無法王冠にも被害が出る。


無名無法王冠は今十二狂典が解放されても準備ができていない。地球も、月が隕石を引き付けているので、今壊したら隕石が来る可能性がある。無名無法王冠が月に替わる物の準備が出来ているならば良いものの、今はその準備ができていない。


しかし、何もせずに十二狂典の復活を待つ、というのは癪なので、理玖はプレゼントを送る事にした。十二狂典にとって、全く嬉しく無いプレゼントを。嬉しいのは、喜ぶのは、理玖達無名無法王冠だけのプレゼントを。


「自分達のスキルで、勝つ為の道筋であるルールを潰されるのがどんな気持ちなのか。復活したら聞いてみたいねえ」


誠真契理アンガラミルエゥツト


スキル『誠実』で破壊された。理玖達が一番厄介だと思っていたルール2が。決戦の日は、決戦の幕が落とされる時は近い。

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