第25話 どういう教育をしてんだ、って思ってたら素でやべー奴等だった件
「それ、マジで言ってるの?」
陸軍、海軍、空軍の役割を持つ蛇竜軍元帥のエイドル、空軍の役割を持つ天遊軍元帥のリファエル、海軍の役割を持つ青水軍元帥であるアルゼルド。
その三人の言葉を聞いた理玖はそんな言葉を洩らす。思ってもみなかった。自分への忠誠心は高いと感じてはいたのだが、予想以上だった。
自爆特攻など教えた事など無い、あれが素の状態なのだ、と。その全てが予想外だった
「マジだよ、エンちゃん。私達は戦法とか、強さを高める事はしているけど、そういう心構えはした事が無い。私達は元が統括者、王であるのだけれども得意では断じてない」
「なるほどねえ……これつまり僕のせい?」
「一概に全てとは言えないな」
アルセルドが理玖にそう言い放つ。理玖としてはその発言には疑問符が付いてしまい、つい首を傾げてしまう。アルゼルドはその疑問を溶かすかのように説明を始める。
「エンドの失態は俺達に任せ過ぎた事。そして俺達の失態は苦手だから、と言って後回しにした事」
その言葉の付け足しとして、「何でエンドの見本となるべき元王である俺達がこんかバカな事をしてんだよ。分かってんだろ、王はこんなんじゃねえってよ」という言葉を再度発する。
理玖はその言葉に目を見開かせていた。これは、自分の、自分だけの失態だと感じていたからだ。しかしアルゼルドは理玖だけの失態では無く、自分達の失態でもある、と言った。理玖はその言葉を否定しようと、口を開く。
「違うよ、僕が把握していなかったから……」
「違わねえだろ。一人でやるのが王なのか?そういう王も居るだろう。だけど、お前の王は一人で解決出来るのが王じゃねえんだろ。俺達だってそうだ。俺達は背中を支えられてきた。それなのに今度は俺達が支える時になって、支える事ができなかった」
その言葉に、口を開こうとした。しかし、理玖はしなかった。アルゼルドが言っていた通り、自身の理想の王は一人で解決する事では無い。力があれば、というものでは無い。理玖は料理が苦手だ、無名無法王冠を浮かせている魔法を使うのも苦手だ。
力があったとしても、理玖は何でもはできない。だから支えてもらうのだ。今現状そうなっているのに、何を否定する必要があるのだろうか。理玖はその事に笑みを浮かべる。今は一人では無い、という安堵の感情が生まれた。一人では無い、と分かっていた筈なのに。
「でさ、マジでどうすんのさ」
「タコの着ぐるみ着て踊れば良い!」
「それで親近感沸くの君ら青水軍だけでしょうがぁ!」
理玖は『箱』から色々なものを取り出してアルゼルドに向かって投げる。
タコに変化したアルゼルドのタコ足に当たるのはガンガンに熱されたプレート。アルゼルドは昔に蒼海と呼ばれており、防御に秀でていた。その防御を突破する為に理玖が考えたのが『なんか出来ちゃった熱々プレートをぶつけて焼きタコにしよう』作戦だ。
プレートの熱さでアルゼルドが悶える。これにて第壱作戦は終了した。第弍作戦へと移行する。
「は、ちょま!?あちぃんですけど!?俺の熱耐性がある防御を破るってどんな熱さをしているんだよ。教えてもらっても良いでしょうか」
「正確な温度は知らん!多分太陽の12乗」
「なんて物を造ってんだよ!……だから投げんなよ!」
理玖の第弐作戦としては、ある玉を投げて爆発させる事。その中に入っている物は『ソース粉回転破裂拡散第捌式ZERO号』である。
※名付け親はイリアです。
当たったソース玉は茶色の粉を撒き散らしながら熱々プレートが触れたタコ足にも掛かったのを確認した。理玖は簡易の白紅ノ皇苑宙を展開し、未完全顕現状態である触手を発動させた。
プレートが当たったタコ足を中心に殴りまくる。食材を殴るかのように丁寧に。
「えぇ、なんか弱いんだけど。……いや待て!触手が当たるたびにぶちゅぶちゅ鳴ってるんだけど!?」
「ふっ、マヨ・マーヨヨ・マーヨヨだ」
「それただのマヨネーズだろうがよォ!」
「そうとも言う」
理玖はアルゼルドとそう言い合いをしながらタコ明日を斬り飛ばす。アルゼルドが痛がらないよう、痛覚無効の魔法を付与する。
ソースとマヨネーズがたっぷり掛かってあるタコ足を食べる。タコ焼きは食べた事があったのだが、タコ直焼きマヨソースは食べた事が無かった。中々美味しいタコに驚き、ムシャムシャと食べ続ける。
「……!何か足りないと思ったら、そうだった」
「何がだ、青のりとかか?」
「マヨネーズが足りなかったんだよ。黒、マヨネーズ持ってる?……そう、白が持ってるんだ。掛けてよ、白」
黒の触手は体を横に振り、持っていないと否定をしながら白が持っていると触手を指す。白はしょうがないなぁ、と呆れの姿勢をしながらも、マヨネーズを掛ける。
「うむ、感謝するぞ。……ああ、美味しかった。で、何の話をしてたんだっけ」
「忠誠の問題だろ」
「もうどうしようも無い気がしてるんやが……アルゼルドとリファエルは?」
二人に向かってエイドルが問い掛けるのだが、二人は答えずに顔を背ける。二人とも何とかしたいとは考えているのだが、絶望的だと思っているのだろう。
「よし!これは無理という事で、閉廷!」
「それで良いのか、魔王様」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます