第23話 新兵竜と紅蓮の不死鳥モード魔王
理玖が竜にお前らを鍛えても良いか、という言葉を口にした後、竜はそれに対して承諾をし、竜と白鯨の拠点へ着いていた。
「そういえばだけどさ、君名前は?」
「我の名前ですか?我はミロ・クラスタと言います」
「なるほどねえ……ミロ、君は蛇竜軍に属しているだろ?」
理玖の言葉にミロの体は大きく揺れる。当たり前だろう、蛇竜軍というのは公にされていない組織である無名無法王冠の蛇、竜の特徴を持った一部の者だけが知っているのだ。蛇竜軍、天遊軍などの存在は幹部以下の者であれば教えられていない。例え無名無法王冠の戦闘員や研究員であったとしても。
ミロは警戒を露わにする。無名無法王冠の幹部以上である線は低い、敵である可能性の方が高いと感じたのか、即座に戦闘体勢になる。理玖はその行動に「ふゅー」と嬉しそうに息を吐く。
このまま思う存分に戦っても良いな、と考えてしまったが、その思考を止める。その戦闘をしたらエイドルに怒られそうだからである。
「僕は敵じゃ無いよ。ほら、僕の名刺」
「名刺、ですか……名前、はエンド……エンド様って確かボスの。すみません、不敬を」
「ああ、良いの良いの、そういうの。僕は君を気に入った……とはいかなくとも気になっているからね。公式な場意外だったら気楽に話しかけてくれて良いよ」
理玖はだから気にしなくていいよー、と軽快に笑う。体に少量の炎を纏う。攻撃的な赤色な炎を。紅蓮状態になってから約15時間。その時間で理玖の体は紅蓮に慣れていた。体が強制的に定めていた限界地点が大丈夫な地点へと変化していたのだ。例え理玖の意識内では少量の炎だとしても、現実は膨大な炎だった。
ミロはその光景に瞳が揺らぐ。先程の戦闘では発していなかった炎の熱量に動揺が走る。
(分かっていた、我は分かっていた筈だ。今の我では決して届かないのだ、と。今の我では最強には遠く及ばないと言う事も。
ミロは最強に憧れていた。生きたのは100年、竜にとっては若い。幼児と言っても良いくらいだ。けれど、その幼年には見合わない経験をしてきた。大切な者が目の前で殺される事も、自分の力が足りているのにも関わらず、動くのが遅かった為、仲間を失った事も。
だから、ミロは最強という存在に憧れてしまった。最強という存在になれれば仲間を失う事は無いと思ったから。しかし今自分が所属している無名無法王冠の中のボスであり、蛇竜軍元帥のエイドルに最強に最も近い男だと言われていた理玖が自分の目の前に立って気づく。最強とはどれだけ遠い地点なのだ、と。
「僕のことがそんなに怖い?……別にその恐怖を否定するつもりは無い。僕だって戦ってきた時に怖いって感じる時はあったからね。でもさ、本当に君は恐怖しているのか?僕という強者の強さに打ち拉がれてているのか?」
理玖の言っている事はミロには分からなかった。今自分が感じている感情はそれ以外に何があるのだ、と懐疑的なものを頭に浮かべる。
ミロの種族は戦闘が楽しい、と感じやすいものが生まれる
ミロは決して戦闘狂では無いのだから。
「君が戦闘狂では無いのは知っている」
理玖の言葉にミロは驚く。なぜ知っているのか、という疑問は出てくるがすぐにだったらどうして恐怖に疑問を感じたのか、という疑問に押し潰される。
「僕という地点を知ったことで、圧倒的なまでの上澄みを知ったことでもっと強くなりたい、と考えたんじゃ無いの?」
理玖のその言葉にミロは胸に抱えていたモヤモヤが解消される。強さを知ったことで世界はこんなに広いのだ、と絶望を覚えたが、それと同時に可能性が見えてきた。明確な最強を知ったことで見える強さが少し広がった。
ミロは大切な者を守りたい、という思いで此処まで強さを磨き上げてきた。その
強さを得たせいなのか、もっと強くなって仲間を守りたいという爆炎のような思いは薄まっていた。それが再び強まっていく。爆炎のように、守りたい思いが膨れ上がり、魔力の枷を一つ、一つと外しいていく。
闇竜という種族らしく、魔力を闇に変換して体中に纏う。理玖が纏っているような燃え盛る炎では無い。ミロの闇はドロドロ、と粘着質に蠢いていた。
ミロは息を深く吸い、効率よく、そして出力を増大させる。ミロは一旦、なんの魔法も使わず、今自分が纏っている闇のみで身体強化をして理玖に突っ込む。ミロのその俊敏さには理玖も目を見張るものがあったのか、感心したように目を細める。
ミロの拳が理玖に直撃するのかと思われたが、理玖は手のひらを広げて防御をする。纏っている炎で自身の拳が焼かれる、と考えていたのだが、纏っている闇のオーラで中和をしているのか、なんの延焼攻撃を受けなかった。
「中々やるね……蛇竜軍の将校でも此処までのオーラはあまり見れるものじゃ無いよ。エイドルが君のことを褒めていただけはあるよ。後数年、僕が君を鍛えたら無名無法王冠でも有数の強者になるだろう」
理玖は受け止めているミロの拳を弾いた後、腹に炎が纏ってある蹴りを喰らわしてきた。闇のオーラ、そして変換している魔力とは別の魔力を腹に纏って防御をする。まだ幼い竜なのにこれ程の防御術を獲得しているのは信じられないのか、目を見開く。
「少し、ヒートアップしてきました。我のこれが収まるまで、付き合ってくれますよね?エンド殿」
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