第5話 25刻の女王VS魔王 2
カミアは中止の一言を出そうとした途端、大穴から金属音が鳴る。まだ戦っているのだ、こんな事態になろうとも。
理玖は自身の剣を振るう。同じくして剣を振る。飛ぶ斬撃がお互いの斬撃を消そうと攻撃し合う。
理玖が自身の斬撃目掛けて手印を結ぶ。手印を結ばれた対象である斬撃は黒い炎を纏う。理玖と同じような、深淵を宿したような炎を。
『
その斬撃は先刻と同じように爆発する。しかしあの爆発よりかは範囲が大きく無く、威力も弱い。この威力にシャロンは疑問を覚える。何故この魔法なのかと。
理玖は煙の中を駆け抜け、シャロンの元へと走る。自身の剣に『闇ノ太陽』の出力を更に上げたものを纏わせる。
轟轟と燃える剣でシャロンを切ろうとする。しかし一歩手前の状態でシャロンは気づき、己の剣で防御をする。シャロンは防御しても尚来る衝撃に一歩後ずさり、理玖はその隙に何度も攻める。
休む事など許さず、何度も何度も撃つ。自身のボルテージが今この場で急上昇しているのか、鋭さが上がっていく。潜在能力が次々に開花していく。理玖は一度連続攻撃をやめ、剣を懐に引っ張る。シャロンはそれを隙と捉えて攻撃しようとするが、すぐに受け流しに移行する。
理玖が超至近距離による斬撃を発生させたからだ。膨大な魔力と上がるセンスで斬撃が先程よりも更に強力になっていく。シャロンはその斬撃を受け流した後、理玖から距離を取る。理玖はそれに対して逃さないと言わんばかりに斬撃を飛ばす。
シャロンはその斬撃を避ける。少々の飛ぶ斬撃による反撃を加えながらも。理玖はシャロンの斬撃を弾き、斬撃速度を速める。
シャロンはその斬撃を足場にする。目の前にやってくる斬撃を弾き、跳んでいく。
斬撃から斬撃を移動する事で速さを高めていくシャロンは、急激な速さで首を狙う。理玖はその斬撃を剣の腹で防御した後、弾く。しかしシャロンの攻撃はこれで終わる事は無かった。
シャロンは理玖の腹に向かって突きをしようとするのだが……刺さらない。防ぐ、防がないの問題ではない。剣が止まったのだ、刺さる前で。これは理玖が使用した魔法の影響なのでは無い。今現在理玖が魔法を行使しているのは『闇ノ太陽』のみだ。
ならば考えられる理由としては一つ。シャロンが意図的に止めた、それのみだ。何故そんな事をしたのか、そんな疑問が巡るのだが、すぐ答えは出た。考えたから、では無い。結果として、攻撃として喰らったから答えが出たのだ。
シャロンの剣から自身の腹、体全体に衝撃が伝わる。本日で二度、『無法なる魔王』エンドの装甲を突破し、貫通した。些細なダメージなどとは到底言えない攻撃を与えたのだ。
理玖の口からは血が溢れ出る。
理玖は魔王。痛みで止まって良い存在などでは決して無い。体中が痛みを発しているが、全く気にせずにシャロンの腹へと蹴りを喰らわせる。衝撃攻撃を喰らってすぐに蹴りを喰らわせるとは思わなかったのだ。
シャロンは脚撃を喰らってある程度吹き飛んで行く。そして理玖はその吹き飛んでいるシャロンに向かって追いかけた後、追撃として更に蹴りを喰らわせる。先刻よりも更に大きく蹴られたシャロンは大穴の壁に激突する。理玖はそのぶつかったシャロン目掛けて斬撃を放射する。
シャロンはその斬撃を避ける為に、自身が激突した壁を登る。下から理玖による斬撃を飛ばされながら。
シャロンは大穴を抜け出し、空中を浮遊する。空中に己の魔力を伝達させ、魔法という形に変化にさせて発動させる。シャロンが夢想するのは『炎堕』のような炎系では無く、高火力、高スピードの雷。理玖に万を超える雷を降らす。
『
理玖は雷の魔法攻撃を避けながらも、空へ昇っていく。しかし全部は避けれない。避けれないものは無理して避けず、その雷がぶつかってくる時は全身に魔力を纏って防御をする。
理玖とシャロンの距離が850mに近づくと、理玖は特大の魔力を自身の剣に宿らせ、振るう。魔力砲が雷の魔法、『雨天ナリ雷ノ暁』を打ち消しをする。
雷の魔法と魔力砲がぶつかり、爆発する事を背景に理玖とシャロンの剣が打ち合う。
その空中に留まることは無く、常に動き、剣を鳴らす。理玖が突きをしようとするが、シャロンはその攻撃を弾く。そして攻撃を弾いた事で隙を見せた理玖の腹に前蹴りを喰らわす。
理玖はその前蹴りによって吹き飛ばされながらも、空中で一回転をし、吹き旅を強制的にやめ、シャロンの方面に突っ込む。
理玖は先刻と同じように突きの態勢に構える。先程と同じ攻撃に何のつもりか、とシャロンは問いただしそうになっていたが、口を塞ぐ。理玖は答えないと思ったのだろう。事実、シャロンに聞かれたとしても今は答えない。この戦闘が終わったら答えるだろうが。
理玖はシャロンに近づく度に速さを急上昇させる。シャロンは迎え撃とうと構えるが、その構えが機能する事など無い。理玖は元々、今回は剣による攻撃はするつもりが無かったのだから。理玖はシャロンの隣を通り過ぎる。横腹を人差し指でちょいと触りながら。
『
理玖が人差し指をくるっと回すと、先程理玖が触った横腹部分が吹き飛んでいた。
此方にも漂ってくる血の臭いに成功した、と思いながらも、次の魔法の用意をする。
理玖は『時巡リ廻ル爆撃』で周囲に霧散していた魔力を集める。一度魔法によって役を終えた魔力は
空中に魔法を刻み、展開する。自身が今尚纏っている『闇ノ太陽』の炎も利用し、使用コストが安い、超火力という理想的な魔法が出来上がる。
その完成した魔法がシャロンに全方位で襲いかかる。所謂、飽和魔法攻撃、というものだ。連射速度も発生コストも安い為、全て合わせて一秒に1548回の魔法攻撃だ。
その魔法攻撃の量、自身の剣で捌くには限界過ぎるのだ。シャロンは自身に魔力防御を展開する。長くの研鑽を積み、エルフである為、膨大な魔力を抱えているシャロンだとしても、限界は来る。シャロンの魔力は無限ではなく、膨大なのだから。
理玖はこれで終わらせる為に、体中に纏っている『闇ノ太陽』の出力を更に上げる。理玖のような、魔力を持ち得た途端、開花するような潜在能力、膨大な魔力が無ければ不可能な芸当。
理玖は自身の剣をシャロンの首元に置く。空中に置いてある魔法は今にも発射できそうだった。
「私の負け、ですね」
「ああ、お前の負けだ」
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